夫婦ってわかり合えなくてもいいのかも?視えない妻が描くおのろけコミックエッセイ
更新日:2019/4/19
なぜ、この人と結婚したんだろう? ケンカしたときや相手にイライラしたとき、こんな疑問が頭をしばしばよぎる。縁あって夫婦になったとはいえ、元々は他人同士。相手のことを理解するのは難しい。相手が自分にはない能力を持った人ならなおのこと。
霊が視えたり、動物と話せたり、人の気持ちがわかったりする、便利なようでやっかいなことも多いスピリチュアルな能力を持つ夫・スピ夫。そんな彼を面倒くさくも愛おしいと思う妻・りん。『スピな夫が何言ってるかわからない』(えじまりん/イースト・プレス)は視える夫と視えない妻の日常生活を、妻の視点から愛情たっぷりに描いたコミックエッセイだ。
物語は2人の出会いから始まる。客としてスピ夫のカウンセリングを受けたりん。カウンセリング後、スピ夫のことが頭から離れず思い切ってデートに誘うも、「俺のどこがいいの? 変わってるね!」と笑い飛ばされてしまう。
勇気ある告白を笑い飛ばすとは何事だ、となりそうなのだが、ここで懲りないのがりんの持ち味。告白から半年経った頃に「あれから元気してるかなぁ」と新年の挨拶メールを送るのだ。能力を目当てに近づいてくる人の多さに疲れていたスピ夫は、りんの人柄に癒やされ、交際を始めることに。晴れて恋人になったと思いきや、今度は「恋人じゃなくてチームにしよう。チームなら傷つかなくてすむ」とりんを困惑させる。ここまででもスピ夫の面倒くささがよくわかる。
スピ夫は人混みの中を歩けないし、テレビも普通に見られない。時にはりんに一晩中スピリチュアルを語るなど、実に面倒くさい。それでも本作から伝わってくるのは、りんがスピ夫を愛おしく思う様だ。りん曰く、
相手のことを理解しようとあーだこーだやっていたら相手より自分のことを理解することが多くて
とのこと。スピ夫と出会って約6年、結局スピ夫のことは理解できていないままだという。夫婦だからといって必ずしもわかり合う必要はないのかもしれない。
パートナーの言動にイライラする――そんな時にぜひ本書を手にしてみてほしい。ほっこり癒されて、ほんの少し優しい気持ちになれること間違いなしだ。
文=水本このむ