「僕は今いじめをうけている」微妙に優しいいじめをくり返す不器用な不良と冴えない僕の物語
更新日:2019/4/19
地味で冴えない主人公の田村くんは、不良のクラスメイト・木崎くんにいじめられている。今日も木崎くんが田村くんのもとへやって来て――
木崎くん「これ(500円玉)でメロンパン買ってこい」
田村くん「メロンパン1個に500円も…!?」
木崎くん「足りなかったら二度手間だろうが!! 15分で買ってこい!!
田村くん「僕の足の遅さを考慮して長めに時間とってくれてる。微妙に優しい!」
そう、いじめっ子の木崎くんは、いじめられっ子の田村くんにいつも“微妙に優しい”のだ。そんな木崎くんに田村くんはパシリにされたり、ゴミを押し付けられたり、変なあだ名を付けられたり…けれど、なぜだろう、そのいじめはなんだか微妙に優しくて…!
『微妙に優しいいじめっ子』(1)(もすこ/講談社)は、主人公たちの不器用なやり取りが読者の心にそっと染み入る“微妙に優しい”友達コメディ。作品のはじまりは、作者がTwitterに載せた4枚の漫画。それがフォロワーに大反響を呼び、ついに1冊の物語となった。
オレンジ髪にピアス姿の木崎くんの“いじめ”は、毎回どこかちょっと可愛い。田村くんの消しゴムを強引に奪ってしまうが、きれいなほうの角は使わずにちゃんと残してあげていたり…。
作者のもすこ氏は、ちょっと一癖ある男子の心理を描くのが得意な人気漫画家。思春期の学生同士のちょっと甘酸っぱくてクスッと笑える物語が可愛らしいと読者から評価を受けている。本書は、23編のショートストーリーが収録されており、気軽に読めて手に取りやすいところもおすすめだ。キュートな登場人物たちのやりとりには、思わず頬がゆるみ、ほっこりしてしまう。
ことあるごとに田村くんのもとへやって来ては、なにかしら仕掛けてくる木崎くん。怖い顔をして、ただごとではないオーラを放ってやって来る木崎くんが繰り出すちょっと変ないじわるに、困り顔でビクビクしながらも、ツッコミを入れる田村くん。クラスメイトたちはいつもいじめられている田村くんのことを心配して遠巻きに見ているだけなのだが…。この不思議な友情(?)関係が、なんともアンバランスで、目が離せないのだ。
それにしても、木崎くんはなぜそんなにも田村くんに“微妙に優しい”いじめをくり返すのか? ――それには、木崎くんなりの、冴えない田村くんに対するある思いがあるようだ。話を追うごとに、いじめっ子木崎くんの意外な素顔がちょっとずつ見えてくる。不良キャラの隠された一面に思わずキュンとしてしまう読者には必見のストーリーだ。
本書には単行本限定の描き下ろし漫画も収録されており、Twitterで本作を読んでいたファンも改めて楽しめる内容となっている。5月には待望の2巻も刊行予定。作者も自身のTwitterアカウントで日々勢力的に情報を発信しているのでチェックしたい。このキュンとしてクスッとできる物語に、これからどんな展開が待っているのだろうか。木崎くんの“微妙に優しい”いじめと、2人のこれからの友情関係からますます目が離せない。
文=ジョセート