長時間労働は社員の成長につながらない! “脱社畜”し社員が自己実現する組織論
更新日:2019/4/19
時代は「平成」から「令和」に移り変わる。時代が変われば、働く社員も変わる。会社に人生を捧げたモーレツ社員は今やほとんど姿を見かけなくなり、多くの人はワークライフバランスを重視するようになった。条件が合わなければ率先して転職して、本業以外の副業(複業)に取り組んで、投資などの資産形成も模索して…昭和世代のビジネスパーソンが飛び上がるほど私たちの働き方は変化した。
働き方が変われば、社員教育も変わる。4月から新入社員が入社して、新人育成に力を注ぐビジネスパーソンは、ぜひ『全員の才能を極大化する 最高の組織』(大賀康史/自由国民社)を読んでほしい。
本書は、これからの時代を生き残る理想の組織を追求するビジネス本だ。多くの組織が抱える課題と解決策を解説する。第3章では、今の時代に合った「入社したメンバーが伸びる人材育成法」が記されている。
■新入社員に課す大枠の研修プログラムはあまり機能しない
多くの企業では、紋切り型のプログラムに合わせて人材育成を行う。大企業になるほど、新入社員一同が数カ月間にわたる長期研修を受ける。しかし本書ではこう断言されている。
人材育成であれば、大枠のメニューに全員が従うようなプログラムはあまり機能しない。
価値観や興味は人それぞれ異なり、業務を遂行する能力もまったく異なる。型にはめた大枠の育成プログラムを行う時代は過ぎた。
新入社員それぞれ成長に沿った形で、一人ひとりに仕事をカスタマイズできれば、研修よりはるかに効果がある。適切な仕事を与えれば驚くべきスピードで成長し、どんな業務でも3カ月程度集中して取り組めば、第一線で活躍する人材になれると本書は力強く指摘している。
■人は勤務時間が長い方が育つ? 短い方が育つ?
かつてモーレツ社員たちは、人生の目的が「会社の成長」や「会社の売上の向上」と間違われても仕方ないほど働いた(働かされた)。しかし現在のビジネスパーソンにとって、仕事は人生の一部。「できれば短いほうがいい」という人が大多数だ。本書にはこんな問いがある。
「人は勤務時間が長い方が育つのか、短い方が育つのか」
この答えは「短い方が良い」。誰もが体感的に感じているように、労働時間が長くなればなるほど生産性が落ちて、アウトプットの総量が小さくなる。さらに結果が出ていなくても、「長時間働いた!」という頑張りに満足する。
一方、労働時間がある程度制約されると、就業時間までに業務を終えるよう集中力が高まり、創意工夫を考え始める。仕事のミスが減り生産性が高まる。新入社員や部下を育てるためには、長時間労働の見直しが急務だ。
人材育成を任された先輩、もしくは部門長は、まず部下の労働時間が短くなるよう仕事の工程を見直してアレンジしよう。新入社員や若い部下が目の下に黒いクマを作り、「寝ずに仕事をするのがバリュー」と言われた時代はとっくに終わりを迎えているのだ。
■本書に取り入れられた驚きのサービス
最後に本書の「他の書籍にない特徴」を取り上げたい。
本書の著者は、1冊10分で読める本の要約サービス「flier(フライヤー)」の創業者・大賀康史さん。そのため本書では、その内容を10分で理解できる「要約」が「はじめに」の部分で掲載されている。同社のサービスを率先して書籍に取り入れているのだ。読み手側としてこれほどありがたいサービスはない。
まさか書籍の内容の要約がその本の冒頭にあるなんて、昭和世代の読書家たちは驚いて口をあんぐり開けるに違いない。これも忙しい現代人のニーズに合わせて誕生したサービスであり、著者から読者への心配りといえる。
時代が変われば、働き方が変わる。働き方が変われば、人材育成も変わる。書籍の内容だって変わる。時代の変化に対応できるビジネスパーソンが、令和時代を切り開いていくはずだ。最高の組織を作りあげるため、ぜひ今の時代にあった働き方を取り入れてほしい。
文=いのうえゆきひろ