「睡眠のリズムは90分周期」は間違い!?スタンフォード大学教授が教える正しい睡眠常識とは
更新日:2019/4/19
日本人は睡眠時間が短いというのはよく知られた話。平成29年に厚生労働省が行った「国民健康・栄養調査」によれば、平均睡眠時間が6時間未満の人は成人男性で36.1%、成人女性で42.1%もいる。睡眠不足で悩んでいる人は多く、さまざまなメディアで睡眠に関する情報が飛び交っているが、そのなかには間違って広まってしまった常識もある。そんな睡眠に関する間違った常識を正してくれるのが、『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(西野精治/PHP研究所)だ。
著者の西野精治氏はスタンフォード大学医学部精神科教授で、同大学の睡眠生体リズム研究所の所長でもある。2017年に出版された著書『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治/サンマーク出版)は30万部を突破し、数々のテレビで大反響を呼んだ(サンマーク出版ホームページより)。
本書では、正しい睡眠常識や熟睡するための方法、前著で触れられていなかった睡眠障害や睡眠薬などについて詳しく紹介。女性、子ども、高齢者のための睡眠常識についても書かれており、改めて睡眠をとることの大切さを教えてくれる啓蒙本となっている。充実した睡眠の習慣を身につけるための情報が満載だ。
この本を読んでまず驚くのが、これまで「正しい」と信じていた睡眠常識が間違いだったこと。例えば、「睡眠の周期は90分なので、眠りについてから90分の倍数で起きればすっきり目覚められる」というもの。正しいと思われがちだが、西野氏によれば、90分の倍数で起きても目覚めが悪いことはいくらでもあるという。
睡眠周期は確かに約90分といわれているが、それにはかなりの個人差がある。その幅は80~120分と広いうえに、疲労状態や健康状態によって日々変化する。そのため、何時間後であればすっきり目覚められるかというのは、同じ人であっても毎回異なることになり、睡眠周期よりも正常な睡眠リズムをキープすることのほうが重要なのだ。
これを読むと、世間にあふれている情報を丸飲みしてはいけないことの大切さに気づく。睡眠は健康に関係する以上、根拠のない情報を信じて間違った睡眠法を実践しないよう、注意しなければならない。本書にはそんな誤った情報を見抜くポイントについても書かれているので、ぜひチェックしてほしい。
さらに、女性、子ども、高齢者のための睡眠常識にも要注目。先ほどの厚生労働省のデータからもわかるように、日本では男性よりも女性のほうが睡眠不足の状態にある。女性こそ睡眠に正面から向き合うべきなのだ。また、睡眠は脳の発達や発達障害、加齢や認知症とも深く関わっている。本書では子どもや高齢者の睡眠不足がどれだけ深刻な問題を引き起こすかが解説されており、改めて睡眠時間を確保することの大切さや、睡眠の質を上げることの大切さを実感した。
このように科学的観点から睡眠について語られている本書だが、決して難しい話ばかりというわけではない。質の良い睡眠をとるためのコツもたくさん紹介されている。例えば、寝つけないときの解決策や時差ぼけを乗りきる方法、寝具の選び方など、すぐに実践できる実用的な要素も豊富だ。また、眠りにつくまでの環境も重要。本書で推奨されている通りに環境を整えれば、これまであまり眠れなかった人も熟睡できるようになるのではないだろうか。
仕事や家事に追われたり、ストレスを感じたりすることにより、質の良い睡眠をとることが難しくなっている現代。忙しくなると睡眠時間を削ってしまいがちだが、健康的な生活を送るために、私たちは睡眠についてもっと真剣に考えなければならない。睡眠に不満のあるすべての人におすすめしたい1冊だ。
文=かなづち