21世紀的「頭の良さ」をパソコンにたとえると? AIに負けない最強スキルを得る方法
公開日:2019/4/10
新元号「令和」が発表され、日本人はひとつの区切りを迎えようとしている。わたしたちの生活を取り巻く環境も、日々変化している。
本稿で紹介する、『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(山口揚平/プレジデント社)の著者は、外資系コンサルタント会社勤務を経て独立し、現在は事業運営のかたわら数多くの執筆や講演活動を行っている、事業家であり思想家。本書は、これからの時代を生き抜くために身につけておくべき「考える力」の技法や、著者自身が考えて導き出した「2020年以降の世界と、生き抜く方法」について、じっくりと説かれた1冊だ。
■20世紀から21世紀にかけて変わった「頭の良さ」と「問題解決力」
著者によると、20世紀から21世紀にかけて大きく変わったもののひとつに、「頭の良さ」の定義があるという。それは以下のようなものだ。
20世紀の「頭の良さ」:
情報や知識が豊富であること。パソコンでたとえるとハードディスクの容量が大きいこと。21世紀の「頭の良さ」:
「思考力・想像力」があること。パソコンでたとえるとCPUがすぐれていること。
つまり、21世紀の「頭の良さ」とは、大量の情報や知識を持つことではなく、そこから「考える」ことにあるという。
では、「考える」とはどういうことかというと、「概念の海に意識を漂わせ、情報と知識を分離・結合させ、整理する行為」なのだとか。こう言われると「少し難しいな…」と感じるかもしれないが、具体的には、「問いを問う力」「つながりを見出す力」「物事をイメージする力」「ストーリーテリング力」を鍛え、用いることだ。
これまで著者が接してきた、圧倒的に稼いでいる人や仕事ができる人たちは、本質を考え抜き、そこから導き出されたたったひとつのことを行うことで、結果的に効率性をもたらしていたという。つまり、考えることが最も効果的で、あらゆる物事に対して使える最強のスキルなのだ。
■人間がAIに負けないための思考術とは?
一方で、「これからの時代、AIが台頭すれば、考えるだけではやっていけないのではないか」と心配している人もいるかもしれない。しかし著者によると、その心配には及ばないという。なぜならAIは、「計算は得意だが、思考はしない」からだ。
ここで紹介しておきたいのが、20世紀から21世紀にかけて変わったという、「問題解決」についての著者の考えだ。
20世紀、GDPが継続的に成長していく中で求められたのは、大きく「効率化」や「画一化」なのだという。そこでの「問題解決」とは、あるべき姿(To be)と、現状(As is)を把握し、その「ギャップ」を問題としてとらえ、ギャップを細かく分解した上で、そこに数値化した目標を設定してギャップを埋めていくというもの。この方法だと、人間はAIに負けてしまう。
ところが、数値化しても経済が成長しない21世紀において、「問題」は「ギャップ」ではなく「対立」なのだという。Aという事象とBという事象が「対立」する中で“AとBの両方を成立させるための上位概念であるCを発見する”ことが、21世紀的問題解決の特徴なのだ。ここで求められるのが、先に述べた「考える」こと。「問いを問う」、つまり前提を疑い、そこからつながりを見出して解を導いていくのだ。
■最強スキル「考える力」を身につけ、おだやかに過ごそう
本書では、「考える力」を鍛える具体的な方法についても、図とともにわかりやすく説かれている。読めば、これまで自分がとらわれていた思考のバイアスが解かれ、まるで温かいお風呂に浸かっているように、じわじわと頭や思考がほぐれていくのを感じるだろう。
また、本書の後半には、著者が考えた「東京オリンピック(2020年)以降の世界」の予想図や、
“「お金」より「信用」を貯めよ”、 “「できること」よりも「やりたいこと」を優先させよ”といった、これまでの価値観やライフスタイルを見直すきっかけになりそうな内容が続く。そう遠くない未来に向けて、わたしたちは何を身につけ、実践していけばよいのか。本書は心強い指南書となるだろう。
文=水野さちえ