私がオバさんに…なったよ! ネガ過ぎずポジ過ぎず、人生を楽しむヒントを語り尽くす!

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更新日:2019/4/19

『私がオバさんになったよ』(ジェーン・スー/幻冬舎)

 年齢を重ねることに、恐怖感を抱いたことはないだろうか? 容姿の衰えや身体が思うように動かなくなる現実は、直視するのが中々辛い事実でもある。

 そんな心境になった時、自分より年上の人がイキイキと活躍している様子を見ると、なんだか安心する。知性と品格がにじみ出る佇まいで、「若さ」だけを正義とするのではなく、さまざまな出来事を柔軟に受け止めている姿を見ると、自分も「こうありたい」とワクワクしてくるのだ。

『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)は、著者のジェーン・スーさんが「もういちど話したかった」対談相手との連載をまとめた1冊だ(能町みね子さんだけは例外で、今回思い切って声をかけられたそう)。

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 光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん…と、各界からのそうそうたる著名人が「これから先、楽しく暮らしていく手がかり」をさまざまな方向から語る。「人生、折り返してからの方が楽しいかも」というジェーン・スーさんは、一体、彼らと何を語り合ったのだろうか?

■これからは自分の頭で考えないといけない時代

 個人的に最も印象に残ったのは、ジェーン・スーさんと同世代の脳科学者・中野信子さんとの対談だ。

 中野さんによると、脳はものすごくリソースを消費する器官なので、本当は普段あまり使いたくない場所なのだそうだ。だが、現代は、確かだと思っていたものが崩れ始めて、混沌とした時代である。「これがあれば大丈夫」というものさえ、どんどん変わりゆく。

“決めなきゃいけない時代になったんだよね。なにかを鵜呑みにはもうできない、自分の頭で考えないといけない時代。”

 中野さんはそんな風に語り、ジェーンさんも、今までより速いペースで変化するであろう価値観への対応を身につけて磨かないと難しいのかも…と話していたことに、身の引き締まる思いがした。

 また、『逃げるは恥だが役に立つ』の漫画家・海野つなみ先生はこう語っていた。

“正しさは時代によって変わるので、物語のなかではその都度登場人物が正しいと思うことを描くだけで、誰かが正論を吐いたらそれに対する意見もぶつけたりします。”

 基本的に全ての対談相手の方が、時代背景や歴史やご自身の経験などを参考にしながら、物事をさまざまな方向から見極め、判断する柔軟さを持っていた。歳を重ねても、常に進化し続けていく生き方に、視界が開けるような気持ちになった。

 他にも、女子の自立や属する社会からの脱出の重要性を啓蒙する作家の山内マリコさんの「『女の敵は女』は間違いなんだよ」という主張にハッとさせられることもあれば、男性学で話題の田中俊之さんの「男性の生きづらさと女性の生きづらさはコインの裏表」という発言に、男女両方の視点で問題を解決する大切さを学ぶこともあった。

 結婚や出産や終身雇用がそれぞれ「絶対」ではなく、生き方の正解を自分で探し求めなければならない現代。人生の先輩方が「こういう生き方もあるよ」とさまざまなロールモデルを示し、活躍されている姿は、人生のヒントや励みとなるだろう。頭をフル回転させながら集中して読まなければならない本ではあるが、得られるものは無限大である。歳を重ねることや、これからの生き方に不安を抱いた時、ぜひ読んでみてほしい。

文=さゆ