7人に1人の子どもが貧困状態――壮絶な半生とともに語られる「負の連鎖」を断ち切るための提言
更新日:2019/5/7
今、わが国の7人に1人の子どもが貧困状態にあるという。貧困の定義は大きくわけて2つある。最低限の衣食住を確保できない「絶対的貧困」と、教育の機会が損なわれ文化的に困窮していく「相対的貧困」。日本で語られる子どもの貧困は後者である。この問題に真摯に向き合っているのが、『その子の「普通」は普通じゃない 貧困の連鎖を断ち切るために』(ポプラ社)の著者・富井真紀さんだ。
富井さんが代表理事をつとめる一般社団法人日本プレミアム能力開発協会(JPCCA)の主な活動は「プレミアム親子食堂」や「読書・勉強Café Very Slow」などの運営。すべて、経済的な困窮や虐待に苦しむ子どもたちへの支援が目的だ。本書では、その支援事業についてはもちろんだが、なぜ貧困が連鎖するのか、断ち切るためにはどうすればいいのかが富井さん自身の半生をふりかえりながらつづられている。
生まれて半年後に母親が失踪したため、小学校入学直前まで「お母さん」という存在を知らなかった富井さん。父は職を転々とし、給料のすべてをパチンコにつぎ込むギャンブル依存症。まじめに勤めていた時期もあるものの、借金を返済しおえてまもなく新しい借金をつくり、家にある金はすべて持ち前の嗅覚で見つけ出しギャンブルにつぎ込む。借金取りから身をひそめるために家では灯りをつけられないから勉強もできず、進学をあきらめ、働きだした稼ぎもまた奪われる。どれだけ努力しても台無しにされていく現実に、富井さんはやがて無気力になっていく。
「家を出ればよかったのに」「バイトできるなら自立もできるでしょう」と外から言うのは簡単だ。富井さんはおばあちゃんが大好きだった。大好きだから、困らせたくない。家に帰らず心配をかける自分が悪いことも知っている。だけどどうすればいいかわからない。父親のことも、切り捨てきれない。その葛藤がさらなる自己否定と苦しみを生む。
そして本書で富井さんも語るとおり、相対的貧困とは、情報の困窮でもある。自分の家が「普通」とはどうやら違うらしい、とうすうす察してはいても、自力でどう行動すれば現状を改善できるかなんて、知らなければわからない。いちばん身近な大人である親を当てにできない子どもが、誰かに聞く、頼ることができないのも無理はない。情報がなく、学ぶ機会もなく、頼れる大人もいないなかで、もがき続けた結果、富井さん自身も「困窮家庭の母親」となった。我が子には「普通」を与えてあげたいと思いながら、やっぱり「普通」がわからないから失敗してしまう。
必要なのはただの経済的支援ではないことを、富井さんは身に染みてわかっている。施設に預けるのが最善の場合もあるけれど、「親に捨てられた」という傷を負わせかねないことも知っている。そんな富井さんだから、できる最善の支援がある。
〈貴方にも楽しくて、優しくて、温かい日々がいつかきっと来る〉という願いを込めた本書はきっと、最初の一歩を踏み出すための力となってくれるはずだ。
文=立花もも