宮沢賢治『よだかの星』あらすじ紹介。いじめられた優しい鳥は、星になった

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/12

風の又三郎
『よだかの星 (日本の童話名作選)』(宮沢賢治/偕成社)

 よだか(夜鷹・ヨタカ)は醜い鳥であった。顔は味噌をつけたようにまだらで、くちばしは平たく、耳まで裂けている。そのためよだかは他の鳥たちから嫌われ、いじめられていた。

 よだかは鷹の仲間ではないが、その強靭な翼と鋭い鳴き声がどことなく鷹に似ているため、その名前となった。しかし鷹はこれを嫌がっていた。

 ある夕方、鷹がよだかの巣にやってきて、「市蔵」に改名しろと命令する。よだかは断ったが、鷹は改名しなければ殺すと脅してきた。

 鷹が帰った後、よだかは目をつぶって考えた。自分は何も悪いことをしていないのに、見た目のせいで忌み嫌われる。よだかは大変つらい気持ちになり、夜の空へ飛び立った。

 空を飛び回りながら口に入った虫を飲み込んでいるうちに、よだかは虫を殺めることの罪悪感に目覚める。「もう虫を食べずに餓死してしまおう。その前に遠くの空の向こうに行ってしまおう」と決意したよだかは、弟の川せみ(カワセミ)の巣に行って別れを告げる。

 よだかが最後に自分の巣を片づけて飛び立つと、夜が明けた。よだかは太陽に向かって「どうぞあなたの所へ連れてってください。灼けて死んでもかまいません」と願った。太陽は同情してくれたものの、「おまえは昼の鳥ではないから、今夜星にそう頼んでみなさい」と告げる。

 その夜よだかは星たちにお願いをするが、星はみんなまったく相手にしてくれない。よだかは力をなくし、羽を閉じて落ちていった。もう少しで地面に着くというとき、よだかは突然空へと飛び上がった。

 よだかは毛を逆立て、高く高く叫んだ。どこまでもまっすぐに、空の上へと昇り続け、よだかはついに息絶えた。

 しばらく経ってよだかは目を覚ます。自分の体が青く美しい光となり、静かに燃えているのを見た。よだかの星は今でも燃え続けている。

文=K(稲)