真似してみませんか? 心に響くスピーチができる人の「共通点」と「秘密」
公開日:2019/4/23
「失敗は成功の母」――そうは言うものの、できることなら失敗は避けたいところだ。特に、会社のプレゼンや結婚式のスピーチなど人前で話す際の失敗は、遠慮したいと願う人が大多数だろう。
「一生懸命話したのに、興味を持ってもらえなかった」
「しっかり考えてきたはずなのに、共感してもらえなかった」
「相手の反応が薄く、何も反響を得られなかった」
こんな失敗、想像するだけで暗い気持ちになる。大勢の前ではなくとも、人に何かを伝えたい場面で、こうした不安が付きまとうのは、私だけではないはずだ。
一体どうすればこういった不安を克服することができるのか。この問いに答えてくれるのが、『プレゼンの語彙力 おもしろいほど聞いてもらえる「言い回し」大全』(下地寛也/KADOKAWA)だ。
著者はその結論をこう語る。
「プレゼンがうまい人の共通点は、相手の心に響く言い回しをたくさん知っていること」
著者はもともと人と関わるのが苦手だったそう。それでもめげず、大企業へのプレゼンや社内交渉を20年続けてきた。苦難の末、たどり着いた答えがこの結論だ。
本書は相手の心をつかむような言い回しを100個も紹介しており、そのどれも簡単で、パッと読んで使えそうなものばかりだ。さらに、LINEスタンプで大人気のキャラ、「けたたましく動くクマ」のイラストが、全てのフレーズについている。気晴らしにパラパラ見るだけでもおもしろいし、著者のノウハウを楽しく理解できるはずだ。
本稿では、相手に耳を傾けてもらうために必要となる「興味」と「共感」の引き出し方について掘り下げていきたい。個人的にとても参考となった言い回しを紹介しよう。
【1】「共通点」というマジック・ワード
A:私は毎日一時間読書することで、年収が倍になった
B:年収を倍にする人の共通点は、毎日一時間読書することにあった
この2つの文章の伝えたい内容はほぼ同じで、「読書をすべし」ということだ。だが、それぞれから受ける印象はまったく違うはずだ。
Aは話し手の経験を話している。しかし、なんとなく「自分も同じようになれる期待感」が持てないと感じないだろうか? 一方、Bでは“共通点”という切り口を用いている。すると、Aよりもその言葉に信憑性があるように感じるはずだ。
この2つの違いは「経験者の数」にある。Aの場合は1人だが、Bの場合は「複数」だ。つまり、意識的に複数人の経験として語れば、聞き手を引き込む話し方ができる。
【2】「秘密」を明かせば、ぐっと身近に感じる
A:相手の興味すには、共通点を語るとよい
B:相手の興味を引き出す秘密は、共通点を語ることにある
Aはハウツー本などでよく見かける表現。これでも問題ないが、どこかインパクトに欠けるように感じるだろう。対するBでは、“秘密”という言葉が入っている。たった一言の違いだが、ぐっと引き込まれる表現となった。
“秘密”ということで、そこに希少な価値があると思わせることができる。話し手の自信も伝わる表現なので、ぜひ活用してみよう。
【3】前置きをうまく使えば、聞き手は虜に
A:5年後、あなたのお店は繁盛し、活気に満ち溢れている。もちろん、売上は上々だ。
B:ちょっと想像してみてほしい。5年後、あなたのお店は笑顔のお客で満席。スタッフも楽しそうに接客している。もちろん、売上は上々だ。
どちらとも「お店が成功した未来」についてのたとえ話。Aでは「繁盛」や「活気」とあり、成功の雰囲気はなんとなく伝わってくるものの、全体的なイメージはぼんやりしている。一方、Bには「ちょっと想像してほしい」という簡単な前置きがある。著者曰く、この一言のおかげで、イメージに集中するよう脳が切り替わってくれるのだとか。また、目で見たように話すことで、相手をより深く想像の世界へと導くことができる。
本稿では紹介しきれなかったが、本書には他にも数々の優れたプレゼンのノウハウが掲載されている。プレゼンや交渉が得意だという方でも、自分の話し方と照らして考えることで、さらに技を磨く参考になるはずだ。
表現の言い換えひとつで、相手の関心をうまくつかむことができる。話に引き込まれた相手は、あなたに興味を抱き、信頼していく。そうなれば、さまざまな場面で主導権を握り、物事を優位に進めることも可能になるだろう。
そこまではいかずとも、「人に話を聞いてもらえる力」は、多くの人が憧れる有能なスキルだし、あなたに「自信」を与えてくれるはずだ。本書は、その力を手に入れるための近道だといえよう。
文=冴島友貴