恋愛の仕方は三者三様。人それぞれタイプや愛情の伝え方が異なるからこそ、面白いのだ。『ネコ男子さん！』（マサまさる/集英社）は、3人の男子が織りなすハイテンションBLコメディ。主人公のチカ、トーリ、あーしーは“三人会”と呼ばれる近況報告会を定期的に開催し、彼氏の話や新しい出会いなどの恋バナに花を咲かせている。

　それぞれの恋愛スタンスは異なるが、ひとつだけ共通しているのは、全員が「ネコ（受け）」であること。“3匹のイケメンなネコたち”が繰り広げる、かわいくてちょっぴり生々しい恋愛トークが本作の魅力である。

・チカ…優しい彼氏と付き合って1年になるが、いまだに処女を卒業できないのが悩み
・トーリ…恋多き男で、いつもワンナイトラブで終わってしまうかわいい系男子
・あーしー…大富豪のイケメン男子と絶妙な関係をキープ中。自分をゲイだと認めていない

　ある日、チカは彼氏に誘われて遊園地デートに出かける。三人会の予定をキャンセルし、念願の脱処女に向けてさまざまなグッズを準備したチカは超ハイテンション。はしゃぎながら、カチューシャを求めて売店に向かう。しかし、楽しく買い物をするチカたちの目に飛び込んできたのは、いるはずのないトーリとあーしーの姿……。

　予想外の邪魔者が乱入しながらも、デートを満喫できたチカはご機嫌で遊園地を後にする。そして、幸せに浸りながら歩く途中、後ろを歩く彼氏からふいに声をかけられる。

“今日はこのまま　あの　帰ってしまいますか”
“オレ達あんまりその……夜長く会うことなかったですし。帰ってしまうのもまだ寂しいというか。（中略）よかったらオレとこの後…！”

　勇気を振り絞って“デートの続き”に誘った彼氏と、恥ずかしさと嬉しさのあまりジッと下を見つめるチカ。胸の鼓動が聞こえるほどの沈黙のあと、1年間待ち続けた彼氏からの言葉に答えようとした瞬間……またもや、目の前には遊園地を楽しんだトーリとあーしーが登場し、チカは念願の脱処女を叶えられないのであった。果たして、チカが大好きな彼氏と無事に結ばれる日は、来るのだろうか。続編に期待したい。

『ネコ男子さん！』の魅力は、なんといっても「イケメン×ネコ男子」という最強のペアリング。読み進めるうちに、恋にまっすぐ向き合う彼らのピュアな心に癒されるに違いない。これまでBLを読んだことがない方の、“BLデビューの一冊”に選んでほしい作品である。

文＝山本杏奈