宝くじで6億円を手にした男は幸せになれたのか? それとも…
更新日:2019/5/13
突然、何の前触れもなく大金が転がり込んできたら――想像するだけでウキウキしてしまう。しかし、実際に大金を手にしたら、会ったこともない親戚が金の無心をしてきたり、大きなマイナスがもたらされることもあるだろう。
今から11年前、独身・アラフォー・貯金なし、おまけに会社をリストラされ無職の状態だった男がスポーツくじ・toto BIGで6億円を当てる。『独身・アラフォー・貯金なしだった僕が宝くじで6億円当たってどうなったか!?』(唱田士始矢/主婦の友社)は、6億円を当選させた唱田士始矢さんが、6億円を何に使ったのか、当選後の人生などについて、かなり事細かに記している書籍だ。
途方もない大金である6億円を手にした唱田さん。すぐに豪遊生活がスタートしたわけではない。当選の実感と共にやってきたのは「津波が迫りくるような恐怖」だったという。そのため、当選後1カ月は引きこもり状態に。自分では抱えきれない大金は、今までそれを手にしたことのない人のメンタルに大きな負荷がかかるということだろう。
そんなプレッシャーを乗り越え、唱田さんはわかりやすいほど豪遊生活を楽しむ。2000万円のポルシェを買い、1億3000万円のクルーザーを買い、月の家賃が53万円の家に住み、クラブやキャバクラで1500万円使った夜もあったそうだ。わかりやすいほどの成金っぷりと言える。
人間関係はどうだったのだろうか。羽振りがよくなった唱田さんに対し、中には「金を貸してほしい」という知り合いもいたそうだが、ほとんどの知人はろくに働きもせず、借金を重ねて身を滅ぼしてしまったという。簡単にお金が手に入るという状況は、人の生きる力を奪ってしまうようだ。
家族との付き合い方も大金を手にしてから変化が起こる。もともと、仲睦まじい関係ではなかったものの、6億円のうち1億円を家族に渡していったんは関係改善が見られた唱田さん。しかし、数カ月も経たないうちに、父親から「おかわり」を要求され、断ると
「なんで神さまはお前なんかに宝くじを当てさせたんだ。それは間違いで、俺が当たるべきだったんだ」
という捨て台詞。さらに兄弟からも「もっと取り分をよこせ」と要求される結果に。お金では人の気持ちを買うことはできない。与えれば与えた分以上に求められる。大金を持たずとも、肝に銘じておきたい教訓だ。結局、唱田さんは家族とある程度距離を保って接しているという。
宝くじ当選から5年後、唱田さんはそれまで秘密にしていた当選の事実を公表した。その理由はコソコソ隠れるような生活にうんざりしたことに加え、周囲に流されない自信がついたから、と語る。
唱田さんは大金を手にしたことで“器”が大きくなったように本書を通して感じた。だからこそ、お金に溺れることなく、自分なりの指標を持って、人生を楽しんでいるのではないだろうか。
ちなみに、本書の最後には唱田流「宝くじ当選術」が掲載されている。本稿で紹介するのは野暮というものなので、本書を手に取って、実践してみてはいかがだろう。
文=冴島友貴