弱った時は一流アスリートの言葉に学べ! 弱点に向き合う本当の強さとは?
更新日:2019/5/15
多くの人にとって、新たな挑戦のスタートの季節。新しい職場、部署、学校、生活環境、少しずつ慣れてきた頃だろうか。そろそろ自分のメンタルの脆さが露呈してきた…。そう感じている人はいないだろうか。
五月病という言葉があるように、4月の緊張感が徐々に解けると同時に心身にガタがきてしまう人も多いようだ。「ここで折れたくない」「メンタルを立て直したい」。そう考える方々に、本稿では『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』(鈴木颯人/三五館シンシャ・フォレスト出版)という1冊をご紹介したい。
スポーツメンタルコーチである著者が、一流アスリートの言葉から逆境の乗り越え方を教えてくれる本書。その内容を覗いてみたい。
■イチローが成功を“持続”できた理由
今年3月に現役を引退したイチロー(鈴木一朗)氏。彼が野球選手として我々に残してくれたものはあまりにも大き過ぎてここには到底書き切れない。
「イチローの凄さ」の正体とは何か。そのひとつは、異次元の成功を“継続”させたことではないだろうか。私などはしばしば、「ドカンとひと山当てたいな」と口にしてしまうような性分だが、超一流のイチロー氏は25年以上当て続けてきた。これは驚くべきことだ。
「早く明日になって欲しい。こういう結果のときに余韻に浸ったりすると、この先はロクなことはないですから。」(本書165頁)
本書が紹介したイチロー氏のこの言葉は、彼が5打数5安打という結果を残した試合後のコメントだ。結果を“残し続ける”選手は謙虚で驕らず、ひたむきに自分を疑い、つねに更なる成長の可能性を模索しているのだと著者は指摘する。
あまりにも出来過ぎた成功体験の中には、もちろん当人の実力もあるが、偶然の産物も混ざっていることがある。その点はしっかりと直視しなければなるまい。
大事にすべきことは、過去の大きな成功体験ではなく、昨日より今日、今日より明日と少しずつ前進する自分の中の「些細な成長」なのだ。
■ムードメーカー川﨑宗則が考える「強い人」とは
イチロー氏の弟分として日米の野球界で活躍した、ムネリンこと川﨑宗則氏。「薩摩のイチロー」と称され、持ち前の野球センスと明るいキャラクターでその人気を九州から日本全国へ、さらには海を渡ってアメリカ・カナダへと拡大させた。現在は自律神経の不調を公表し、無所属となっている。
「カワサキは野球が超上手なコメディアン」といった声も聞かれるほど、彼はいつも明るくポジティブな振る舞いでチームメイトや野球ファンを楽しませてきた。そんな彼がこぼした、ポジティブの根底にある考え方が垣間見える言葉を本書は紹介している。
「本当に強い人は、自分の弱さ、他人の弱さを知っている人。人間は弱いんだってことを知ってる人は優しいよ。だから、ポジティブになれる人は、ネガティブな自分を知っていて、受け容れてる人なんだと思う。」(本書139頁)
自分の弱いところを隠し、悟られないように行動する。それどころか自分自身でも弱みを直視しない。人は弱いから、多くの人がそのように自分を誤魔化してしまう。
しかし彼にはそれを乗り越える力があった。川﨑氏の凄さは、自身のネガティブで弱い部分すらも自分の大切な一面として認め、受容し、力に昇華させる「本当のメンタルの強さ」ではないだろうか。
弱点は成長するためのサプリメントだと著者は語る。私たちはつい自分の外側の世界に新しい知識を求めてしまう。しかし川﨑氏のように、自分自身の内側をしっかりと深く知ることは、苦難を乗り越えながら成長し、成熟する上で大切な力であるように思える。
本稿では紹介する内容が野球選手に偏ってしまったが、本書には室伏広治氏、高橋尚子氏、クリスティアーノ・ロナウド氏、本田圭佑氏などなど、各界を代表する超一流アスリートの言葉が詰まっている。
スポーツメンタルと聞くと「体育会系」「スポ根」のような印象を抱く人もいるかもしれないが、世界で活躍する超一流のアスリートたちが抱えるそれは、かなり合理的かつ繊細緻密で、多くの人の指標となり得るものだと感じる。
文=K(稲)