「女の人と付き合いたい」美少女のそんな想いが大学のサークルで叶った。初々しいガールズラブ漫画
更新日:2019/6/13
「好きな人と付き合いたい」
言葉にすれば、当然すぎるその願いも、たとえば相手が異性愛者の同性であれば、途端にハードルは上がってしまう。
たみふる著『付き合ってあげてもいいかな』(小学館)は、レズビアンの主人公・みわと、同級生でお調子者の冴子の恋愛模様を描いたガールズラブ漫画だ。
みわは、学校の教室で座っているだけで「あの黒髪ショートの子かわいくない? 俺ちょータイプ」と噂されるくらい、いい女。ぶっちゃけモテるのだが、彼女は一度も好きな人と両想いになったことがない。それは彼女の恋愛対象が女性であり、それを他の人に一切言うことができなかったからだ。女性のことは好きだけど、女性と付き合えるとは思っていなかった。
クールなタイプのみわとは正反対の性格をした冴子。サークル勧誘で人がごった返すキャンパスで、抱えていたちらしを落としたみわに、初対面の冴子はとっさにしゃがんでちらしを拾う。そして、手渡しながら「うぉわっ…谷間すっげえ…」と言ってしまい、みわを凍らせるのだ。
能天気でがさつな冴子を、絶対に性格が合わないタイプだと思っていたが、明るくて気のいいところに惹かれ、大学の1人目の友達として仲良くなるのだった。
そんな凸凹コンビのふたりは、ある日一緒に所属している軽音サークルの飲み会の帰り、関係性を一気に深めることになる。みわに好みのタイプを聞かれた冴子は、酔いからか、「ぶっちゃけ…男興味ないんだよね。女のほうが好き!?️みたいな…」と返す。そして、みわも自分が女性が好きだと告白すると、冴子から「せっかくだからあたしたち、付き合ってみない?」と提案されるのだ。
あまりにも軽い告白。相手のことを好きかどうかよりも、同性を好きな人に出会える確率の低さをあげて、キスやエロいことをする関係になってみよう、と言う。そして、みわも冴子の勢いに押され「いいよ冴子なら…付き合ってあげても…」と返し、見事カップルが成立。
物語の序盤でふたりは結ばれるわけだが、この作品がおもしろいのは、その後のふたりのもだもだとしながら深める関係性である。
はじめて女性と付き合うことでうれしいが戸惑いを隠せないみわ、軽いノリでリードしているように見えてみわのことが大好きな冴子。ロマンチックに結びついたわけじゃなかったからこそ、素直になれなかったり、邪推しちゃったりして、たまに遠回りしてしまうふたり。ガールズラブとしてはもちろん、初々しいカップルのやりとりは恋愛的なときめきもふんだんにあり、読んでいて胸がきゅーとなる作品だ。
文=園田菜々