高齢者の交通事故を「単なる老化」で片づけてはいけない理由。マンガで理解する老人の「困った行動」
公開日:2019/5/3
先日、ウチの目の前にある一方通行の路地を逆走していく車があった。ドライバーは高齢者だったように見えたが、おそらく見落としか何かで入る道を間違えたのだろう。高齢者が運転する自動車の事故数は増えており、大きな社会問題となっている。原因はいろいろあるのだろうが、「老化」からくる判断力の低下が大きいといわれる。しかし、「老化」とはいうが、一体何が「老化」しているのだろうか? 具体的に変化について知らなければ、自分自身も周りの人も対策の立てようがない。『マンガでわかる! 老いた親との上手な付き合い方 白雪姫と七人の老人』(平松類、つだゆみ/SBクリエイティブ)では、「老化」によって高齢者の心身に何が起こっているのか、マンガで分かりやすく解説している。
タイトルには「親との上手な付き合い方」とあるが、本書の舞台となるのは、あるシェアハウス。ここには7人の老人が住んでおり、そこへ管理人として「白鳥姫子」がやって来るところから物語は始まる。7人の老人によるさまざまな「困った行動」はどれも高齢者特有のものなので、多くの家庭で参考になるはずだ。では本書にはどのような事例が挙げられているのか、具体的に紹介してみよう。
■ケース1:料理に醤油やソースをドボドボとかける
料理上手の老人「香川節子」は、煮物を作ってハウスの皆におすそわけをしていた。ありがたくいただいた姫子だったが、彼女には少々味が濃かった模様。しかし、ハウスの老人の中にはそれでも「薄い」という人もいた。実は、年をとると味覚が衰え、若い頃と比べて「塩分は12倍」も使わないと同じに感じられないのだ。
本書ではその解決策として「うまみ」成分を上手に使うことを推奨する。老人は塩分に比べてうまみを2倍ほど感じやすいので、塩分を控えつつ美味しさを楽しめるという。また「亜鉛」が足りていないと味覚が悪くなるので、「牛肉」や「パルメザンチーズ」などといった亜鉛を多く含んだ食品を積極的に摂取することも重要だ。
■ケース2:タイミング次第で信号を渡りきれないことも!?
姫子はハウスの同居人「秋田かおる」と一緒に横断歩道を渡ろうとするが、人語を話す謎の犬「ルイ」に止められる。信号が青になって時間が経ってから渡り出すと、秋田さんが渡りきれないというのだ。
日本の横断歩道や信号機は1秒間に「1m」歩くことを前提に作られており、85歳以上の男性の平均速度「0.7m」、また女性の平均速度「0.6m」では渡りきれないことも多いのである。したがって、一度赤信号になるのを待ち、次に青になったらすぐ渡り始めるのがよいという。
また、年をとるとまぶたが下がってくるので上方向が見にくくなる。信号機を見上げるのも一苦労の場合があるのだとか。先に述べた車の一方通行逆走も、道路標識を見損ねた結果なのかもしれない。横断歩道を安全に渡りきる解決法としては、軽いスクワット運動で足を鍛えたり、目を強くつぶったり開いたりするまぶたの運動を1日10回程度行うのが効果的だ。
本書を通読してみると、自分の親が「老化」しているのは分かっていても、実は何がどう衰えているのかまったく理解していなかったことを痛感した。つまり私は、「老化」を対処しようもないこととして、そこで考えるのをやめていたわけだ。確かに「老化」は避けがたいことかもしれないが、その原因や症状を正しく理解していれば、対処法は必ずある。高齢の親を持つ家庭は今後も増えるだろうが、「年をとったから気難しくなった」と諦めるのではなく、何がどう変化しているのかをしっかり把握して、自らの親を労ってもらいたい。
文=木谷誠