20年後には人口の5割が独身に!? 「超ソロ(生涯独身者)国家」日本で主役となる「エモ消費」とは

社会

更新日:2019/5/10

『ソロエコノミーの襲来』(荒川和久/ワニブックス)

 これまで「おひとりさま」(ここでは独身者の意味)といえば、とかく肩身の狭い思いを強いられてきた。宿泊施設や飲食店など、サービス業の多くがファミリー層(もしくは複数客)をターゲットの中心に据えてきたからだ。

 しかしこの先、その立場は逆転し、おひとりさまこそが消費の新たな主役となる「ソロ社会とソロエコノミーの時代に突入する」と見立てるのが、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックス)の著者、独身者研究の第一人者、荒川和久氏だ。

 2017年に著書『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP研究所)で、増加傾向にある生涯独身者を「ソロ」と呼称し、今後日本は、少子化・高齢化に加えて独身者が人口の約半数を占める「超ソロ国家にもなる」と予測した荒川氏。

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 本書はさらに、来るべき超ソロ国家日本の消費構造を「ソロエコノミー」と命名し、その概要を考察した内容だ。

■2040年、人口の5割が独身となる超ソロ国家、日本が誕生する!?

 まず、著者のいう超ソロ国家とはなにか。本書によれば、国立社会保障・人口問題研究所が2018年に出した配偶関係別人口推計(15歳以上)によれば、「2040年には独身率は47%に達し、人口の5割が独身となり一人暮らしが4割の国になる」と予想されるという。これが超ソロ国家、日本だ。

 さて、ここまでの文脈においては、ソロ=独身者と置き換えられるわけだが、じつはソロという言葉には、もっと深い意味合いが込められていることを本書で明かしている。

 それは著者の定義する本来のソロとは、「選択的独身者である」ということだ。わかりやすく言えば、結婚できないから独身でいるのではなく、あえて独身でいる、のである。

 そうしたソロ男女は共通して、「一人の時間を大切にしたい」「他者の干渉を受けたくない」「誰かに頼りたくない」という、自由・自立・自給の3つの生活価値観を持っており、著者の調査によれば、全独身者男女のうちの、40~45%がこのソロにあたるという。

■AKB48のCDセールス成功の背景にあったものとは!?

 こうしたソロ層が中心となり、大きな消費市場を形成していくのが、「ソロエコノミー」で、家族層を中心にした消費の時代から、「消費意欲の旺盛な現役世代(20~50代)の独身者」が消費をけん引する時代になるという。

 では、ソロたちはどんな消費傾向を見せるのか。それは、モノ消費(所有のための消費)やコト消費(体験を得るための消費)ではなく、感情的な充足感を得ることを目的にした消費で、著者は「エモ消費」と名付けている。

 エモ消費の成功事例として著者は、AKB48が行った握手会参加券や選挙権付CD販売の手法をあげている。その背景には、CDを所有したい(モノ消費)や握手したい(コト消費)よりも、推しメン育成に加われるという感情消費=エモ消費があったからであり、その中心にいたのがソロ層であると著者は分析している。また、インスタ投稿がヒットした背景にも、エモ消費があるという。

 こうしたソロ層には、結婚していないという欠落感が生み出す独自の「承認欲求」「達成欲求」があり、それらを埋めてくれるのがエモ消費なのである。そのため、今後の消費市場においては、こうしたソロたちの消費モチベーションをしっかりと掌握し、相応のサービスを提供することが重要となってくるという。

 本書には、ソロ層の特徴の詳細な分析や、動かし方なども記されているので、マーケティングなどを仕事にしている人には大いに参考になるだろう。

■1970年代、日本政府は少子化を奨励していた!?

 それにしてもなぜ、今後ソロ層が増えるのか。本書には、独身者が増加してきた時代背景などが統計データと共に詳細に解説されている。また、独身者増加や少子化のきっかけには「1970年代、日本政府は少子化を推進してきた背景がある」と、あまりマスコミが報道しない事実についても言及している。

 一方で、ソロの時代は現代特有ではなく、かつては江戸時代にも、ソロエコノミーが勃興したという。本書には、屋台や居酒屋、アイドルなどが誕生した江戸文化にも触れており、知られざる江戸の一面をのぞくことができる。

 とはいえ、江戸時代のソロたちと現代のソロ層には、大きな違いがある。それは、ネットワーク形成力だ。今後日本では、ソロ層が形成していく「個」のネットワークが、家族に代わる新たなコミュニティの在り方を生み、さらには、ソロも家族も協力し合える社会へと成長するという。

 さて、令和の時代を迎えた日本。本当に今後も、あえて結婚はしないというソロ男女は、増え続け、ソロエコノミー時代に突入するのか? まずは本書で、著者の主張を確認してみてはいかがだろうか。

文=町田光