人間関係が面倒。上から目線でイライラさせるあの人を黙らせてスッキリする秘策は?

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更新日:2019/5/14

『いちいち感情的にならない本』(内藤誼人/三笠書房)

 新生活に慣れてきたこの時期は、俗に言う「五月病」のような症状に陥ってしまいやすい。仕事内容や職場の人間関係が少しずつ見えてきたからこそ、「会社に行きたくない」「何もしたくない…」と感じる日もあるだろう。そして、心の余裕がなくなると、同僚や上司、後輩に苛立ち、モヤモヤと言葉にできない気持ちを抱いてしまったりもする。『いちいち感情的にならない本』(内藤誼人/三笠書房)は、そんな不安定な心に効く“処方本”だ。

 本書は、つい感情的になってしまう私たちの心のメカニズムを心理学的に分析した上で、科学的に効果が裏付けられているという「心をスッキリさせる方法」を伝授してくれる。

 人は誰しも完璧ではない。体調が悪かったり、忙しかったりすると心に余裕がなくなり、「イライラ」「モヤモヤ」が生まれる。しかし、「気分が晴れる方法」を知っていれば、マイナスの感情に振り回されることなく、気持ちを上手に切り替えられるようになるはずだ。そうすれば、職場や家庭での人間関係も円滑になり、より心は楽になる。これを機に、“心の整理術”を学んでいこう。

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■感情はたった30秒で伝染する

 職場で上司がピリピリしていると、なんとなくその場にいる全員もピリピリしてしまうもの…。そんな経験をしたことがある人は、「感情にはウイルスよりも強力な感染力があるのかも」と思ってしまうかもしれないが、それはあながち間違いではないそうだ。

 本書で紹介されているスウェーデンでの研究では、「人の感情はわずか30秒で伝染する」ことが明らかになったそう。この実験は120名の大学生を対象にして、彼らを40名ずつのグループに分け、それぞれに「怒っている表情」「笑顔の表情」「無表情」のスライドを30秒間見せた。その後、自分のその時の感情を答えてもらったところ、不思議なことに、見せたスライドと同じ感情が引きだされたのだという。この実験からは、感情の“感染効果”がどれほど強いのかが伝わってくる。

 この科学的根拠を利用するなら、職場では自ら“楽しそうな顔”をしてみるのが効果的だろう。ポジティブな感情を伝染させていけば、周りの笑顔が引きだせるだけでなく、自分自身もハッピーな気持ちになれる。

 心理学では、楽しいと思っていなくても笑顔を作っていると本当に楽しくなるという「フェイシャル・フィードバック効果」が解明されている。ネガティブな感情が蔓延した職場にいるとつい、気持ちが重たくなってしまうが、そんな場では自分を守るためにも自分発信で「笑顔の感染」を広めていってみよう。

■「イラッ」や「モヤモヤ」をこじらせないためには?

 誰だってできることなら、いつでも笑っていたいし、ハッピーな気持ちでい続けたい。だが、時にはどうしようもない苛立ちやモヤモヤを抱えてしまうことだってある。そんな時は、「種まきの法則」で人間関係を変化させていくのがおすすめだ。

 自ら率先して相手に対し何かを行うのは、「種をまく」のと同じ。「種まきの法則」は短期的にみると非効率的に思えるかもしれないが、長い目でみたら、うれしいお返しがあるケースも少なくないという。単純な見返りを求めない親切や気遣いが種となって、綺麗な花を咲かせることがあるのだ。

 種まきをするときには、自分の心にも余裕を持っておくことが大切だ。例えば、いつもスケジュール帳にびっしりと予定を書きこんでいるような方は、まず「空けておく時間」や「休暇」を書き込み、意図的に心にゆとりを持てるよう気を付けよう。対応しなければいけないタスクに追いかけられ続けていると、神経は消耗しやすい。心身が悲鳴をあげないようなスケジュールは、自分の工夫で組み立てていこう。

■悪意ある相手の「毒気」を抜く秘策

 世の中にはさまざまな人がいる。中には、悪意を持ちながらあなたに近づき、感情を乱したいと企むズルい人もいるかもしれない。そんな毒牙にかからないためには、相手から言われた悪口をそのまま受け止めるという「毒気抜き法」を取り入れていこう。

【「毒気抜き法」の実践例】
A「(からかいながら)お前ってバカなんだなー」
B「そう、俺ってほんとバカなんだよ。この前もおつりの計算を間違えちゃってさ…」

 こうやって受け答えると、相手は悪口や皮肉がまったく効いていないと感じ、毒気を抜かれてしまうのだ。

 この方法は筆者もよく使うのだが、やりとりを通した後には不思議と、イヤな感じだった相手と仲良くなれることも多い。皮肉や悪口を言われると自尊心が傷つきムっとしやすいが、大人の対応をすることで、新たな人間関係が築ける場合もあるのだ。

 最近イライラやモヤモヤが多くなってきたな、と感じている方は、少し立ち止まって「心を落ち着かせる対処法」を試してみてほしい。本書で全6章にわたって紹介する処世術は、どれも明日の笑顔を作る切り札になるものだ。

文=古川諭香