ちょいエロ×ダンス×青春物語! 女子中学生の性や恋心を真正面から描く『スキーターらびっと!!』

マンガ

公開日:2019/5/16

『スキーターらびっと!!』(雨蘭/白泉社)

 女子小学生の無邪気な姿を描き、250万部の大ヒットを記録したちょいエロコメディ『無邪気の楽園』(白泉社)。その著者・雨蘭さんによる待望の新作が登場し、また話題を集めている。それが『スキーターらびっと!!』(白泉社)だ。本作は「ダンス」に熱狂する女子中学生たちを主人公に、同性に抱く淡い恋心や思春期特有の悩みにフォーカスをあてている。

 主人公を務めるのは、明るい性格の宇佐綾乃(うさ・あやの)。ダンスが苦手で、スタイルのいい女の子が大好き。グラビア雑誌を買っては、登場するアイドルのしなやかな曲線美を堪能している。

 そんな綾乃がダンスの授業中に目を奪われてしまったのは、転校生・星原千花(ほしはら・ちか)。気だるげにリズムを取る姿に共感した綾乃は、「ダンス苦手モン同士気が合いそうかなーって」と声をかける。ところが、千花からは「アンタみたいの大嫌い」と拒絶されてしまう。

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 千花の態度に悶々とする綾乃。その理由を探ろうとしてたどり着いたのは、とあるダンス教室。そこで見た千花のダンスは、学校の授業中に見たものとは別物。見たことがないくらいカッコよく、キレイで、エッチなものだった。それを機に千花に急接近した綾乃は、彼女にダンスを習うことになるのだが――。

 前述の通り、本作の主軸となるのは「ダンス」だ。絶望的にセンスがない綾乃、まるで命をかけるように踊る千花。対照的なふたりがダンスを通じて友情を育んでいく様子が丁寧に描かれている。そこで光るのは、雨蘭さんの手腕。大人になりきれていない女子中学生たちが踊るさまを妖艶に、かつ瑞々しく表現しており、ダンスシーンは音楽が聴こえてきそうな臨場感に包まれている。

 また、裏テーマとも言えるのが、同性同士の恋心だ。綾乃が千花に抱く「ダンスがうまい」「スタイルがいい」という羨望からは、性的な欲求の芽も嗅ぎ取れる。はっきりと他者への好意を理解していない中学生だからこそ、そのボーダーラインは曖昧。ときには性別を超えて抱いてしまう恋心のリアルさをつぶさに描いている。

 物語が進むにつれて、千花の家庭に漂う問題も徐々に輪郭を帯びていく。そこにはまた「性」が絡んでいるようで、それが千花に暗い影を落としているのだが、はたして綾乃は彼女を照らしてあげることができるのだろうか。

 揺れ動く思春期の少女たちの葛藤を、「ダンス」という切り口で表現してみせた『スキーターらびっと!!』。そのムズムズするような青春模様を読んでもらいたい。

文=五十嵐 大