あのジャンプとマガジンがタッグを組んだ ――「少年ジャンマガ学園」の狙いを聞いた!

マンガ

更新日:2019/5/17

 4月8日に発表され大きな注目をあつめた「少年ジャンマガ学園」。ライバルであるはずの『週刊少年ジャンプ』と『週刊少年マガジン』がタッグを組み、現在サイト登録者が90万人を超えている(ホームページ参照)。

登録者50万人越えを祝してプレゼント企画が発表された「特別記念号」。両誌連載作品の第1話が1冊に収められページ数は2,264ページに及ぶ。

「学園」と銘打ったこのサービスでは、『週刊少年ジャンプ』『週刊少年マガジン』『別冊少年マガジン』、『少年ジャンプ+』『マガジンポケット』の連載作品が「22歳以下」(※ただし年齢は自己申告)であれば無料で読み放題になる。6月10日(月)までの期間限定サービスだが、若者のマンガ誌離れも指摘される中、大きく存在感を示していると言えるだろう。残り1カ月ほどなる中、プロジェクト責任者のお二人(株式会社集英社 少年ジャンプ+編集長 細野修平氏/株式会社講談社 マガジンポケット編集長 橋本脩氏)にコメントを求めた。回答と共に解説を加えていく。

Q.この歴史的なコラボは、どなたがいつ仕掛けられたのでしょうか?

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「これまでもデジタル展開などで、2社間の情報交換を行なっておりました。そのやりとりの中で「若者にもっとマンガを読んでほしい」という両社の気持ちがシンクロし、今回の企画をスタートすることになりました」

Q.コラボの背景には何があったのでしょうか?

「世の中のエンタメコンテンツが多様化する中で、多くの若者にマンガを選んでいただきたいという想いがありました」

――詳細な経緯は伏せられた格好だが、「デジタル展開で情報交換が行われてた」というのは興味深い。現在、マンガ各誌はスマホアプリなどのデジタル展開にかなり力を入れ競い合う一方で、2つめの回答にあるように「マンガ」がエンタメコンテンツの有力な選択肢であるするためにタッグを組むに至ったことが見えてくる。

Q.入学資格には実質年齢制限がありません。そこにはどんな狙いがあるのでしょうか?

「今回は若者向けということでサイト閲覧時に年齢を記入するフォームを用意しております。本プロジェクトは22歳以下のコンテンツとなっております」

――あくまでも公式には22歳以下向けだという構えだが、筆者の周囲でも「往年のジャンプ・マガジン読者」が話題にしている姿を目にしている。一方で、サイトでは「読書感想文コンクール」や「中間・期末テスト」など、学校をモチーフにした企画コンテンツが展開されており、若い読者に楽しんでもらおうという意図も強く感じる。期間限定ということもあり、年齢制限を厳しくして反発されるよりも、若者を中心としつつも広く注目をあつめたかったというのが本音ではないだろうか。

入学時に自己申告で生まれ年を入力。

Q.「2カ月が短い」という声も聞かれます。好評なら延長されますか? 将来的な構想をお教えください

「今回は現状延長の予定はございませんが、開始から僅か2週間で生徒数が50万人を突破し、反響が思いのほか良いので今後もこのような取り組みを考えていけたらと考えております。期間内もまだ新たなコンテンツがあるので楽しみにしてほしいです」

――延長の予定は今のところないということは残念だが、現在90万人以上という登録者数はマンガ誌の未来を考える際に大きな財産となる数字だ。

 この大型タッグが実現する以前には、海賊版サイトが世間を騒がせたことも記憶に新しい。出版者の垣根を超えてあらゆるマンガが読めてしまうサイトにアクセスが集まったことは、読者のニーズがどこにあるのかをあからさまにした面もある。そして、少年ジャンマガ学園が2週間で50万人の会員を集めたというのも、それを裏付けている。今回は無料での展開だったが、マンガや企画コンテンツの効果的な組み合わせによって、「難しい」と言われているマンガ誌の共通プラットフォームへの進化を期待したいところだ。

 以下の質問は、集英社・講談社それぞれの立場から答えてもらっている。

集英社

Q.週刊マンガ誌の絶対王者が、なぜ『マガジン』と手を組まれたのでしょうか? 読者の奪い合いといったことにはなりませんか?

「想定外の二者が手を組んだということが、ニュースになるし面白いと思いました。この試みは読者というパイを奪い合うというより、パイ自体を大きくできるチャンスだと感じています」

Q.『ジャンプ+』のような既存の取り組みとのすみ分けは、どのように考えていらっしゃいますでしょうか?

「今回は完全無料でマンガに触れてこなかった若者になるべく敷居を下げた状態でマンガ体験の機会を提供するために行っています。今回の少年ジャンマガ学園を通して『ジャンプ+』など既存の取り組みにつながるような動きになることを望んでいます」

講談社

Q.講談社として、電子への取り組みへの誘導といった狙いはありますか?

「いちばんの狙いは漫画の面白さをより多くの若者に知ってもらうことです。電子媒体での取り組みとなったのは、その方が実現しやすかったから、という意味合いでしかありません。しかし少年ジャンマガ学園をきっかけに漫画に興味を持ってもらった後は、『マガジンポケット』など既存の取り組みを利用していただくことで、今後につながれば、という気持ちはあります」

Q.『ジャンプ』と組むことで、どんな効果が生まれることに期待していますか?

「世の中の大きな話題となるとともに、漫画、少年誌により多くの方が注目をするようになるとうれしいです」

 よく指摘されるように、通勤・通学の電車のなかで多くの人がマンガ誌を読む光景は過去のものになって久しい。一方で、スマホの普及に伴いIT企業が新しいマンガ購読サービスを次々と生み出してきた。いま、『ジャンプ』『マガジン』をはじめとした既存のマンガ誌がデジタル化のトレンドを貪欲に学び、時にはライバルと手を組みながら、編集や企画といった強力な資源をデジタルの世界に投じている。少年ジャンマガ学園はその変化を強烈に示す取り組みだったと記憶されるはずだ。

文=まつもとあつし

■少年ジャンマガ学園
入学はこちら:https://jm-gakuen.jp/