「敗者の美学でメシが食えるか」日本マクドナルド創業者の“勝てば官軍・資本主義の教え”

ビジネス

公開日:2019/5/20

『勝てば官軍』(藤田田〈デン〉/ベストセラーズ)

 資本主義のこの世の中。人生の悩みの種にはお金が絡むことが多い。逆に言うと、お金さえ十分にあればほとんどの問題はとりあえず解決できてしまうような気がする。

「じゃあバリバリにお金儲けしてやる!」と一念発起してみても、どこか前のめりになれない自分を感じることはないだろうか。そんな自分は決して悪くないのだが、そのスタンスは社会の構造とあまりにも違いすぎて、「食われる側」になってしまいかねない。

 こんな世の中で「食う側」となって生き残るためには何が必要なのか。本稿では、資本主義社会における成功の絶対法則を説いた伝説的なバイブル『勝てば官軍』(藤田田〈デン〉/ベストセラーズ)からヒントを得たい。

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■「きれいなお金」「汚いお金」という感覚を捨てろ

 世界的に見ても日本人は「金」に対する意識が特殊であるのだという。簡単に言えば、「金儲け」を軽蔑してしまう人が多い。それはなぜか。本書は、そのルーツは徳川260年の封建制度だと説く。

 農本主義的な武士階級の支配が滅び、完全に資本主義化した現在の日本でも人々は「金」を「きれい」だとか「汚い」だとか評し、素直に受け入れきれない。そんな感覚が世界に通用しないことは言うまでもない。

資本主義社会では、金がすべてである。金さえあれば、人生の問題の99パーセントは解決する。それが資本主義というものだ。日本人はまず「金」に対する農本主義的な考え方を捨て、金儲けができないのはバカだと思うようにならなければならない。

 税制度の抜け穴があれば活用すべきで、ビジネスが有利になるのならば政治献金もすべきである。金儲けにイデオロギーなど不要だ。本書の著者はそう言い切る。

■勝てば官軍、負ければ即「倒産」

 日本人は基本的に「性善説」をとっており、「勧善懲悪」というモラルにも親しみが深い。しかしその感覚をビジネスの世界に持ち込むのは絶対にやってはいけないことだと著者は説く。

「自分が儲けるためには、相手をどん底に陥れる。そうしなければ自分がやられる」――そんな修羅場に「性善説」でのぞむと、あっという間に足をすくわれ、骨の髄までしゃぶられてしまうのがオチなのだ。

ビジネスの世界には「勝てば官軍」の理論しかない。
「敗者の美学」といったものは、文学の世界だけで意味がある。文学でメシが食えるか、金儲けができるかと、わたしは声を大にしていいたい。

 では、負ければどうなるのか。即「倒産」だ。「勝てば官軍、負ければ倒産」、その間に“灰色地帯”などない。食うか食われるかの修羅場。そんなビジネスの世界に対しては、性悪説でのぞむべきだという。

「金儲けができないのはバカだと思え」「敗者の美学を説く文学でメシが食えるか」といった言葉は、人によってはかなりきつく感じるかもしれない。正直に言うと、物書きの端くれである私にとっても、なかなかきついと感じる部分がある。

 だが、そうでなければ生き残れないのがこの資本主義社会なのだというのも痛いほど理解できる。大切なのは敗者の美学を「ビジネスのシーンに持ち込まない」ことだ。「食う側」として残るためにはどんなメンタルを維持すべきなのか、本書から気づかされるものは大きい。

文=K(稲)