アインシュタインの遺言の辿った運命がすごい! 著名人120人の「死に際」を集めてみると
公開日:2019/5/19
この世には「奇書」と呼ばれるユニークな書籍が数多くある。その中でもひときわ存在感を放っているのが、古今東西の著名人923人の“死に際”にスポットを当てた『人間臨終図巻』(山田風太郎/徳間書店)。偉人や作家、犯罪者、王族など、著名人たちの死に際には、普通の伝記とは違った奥深さがある。
そんな世紀の奇書をもとに新たに描かれたのが『追読人間臨終図巻I』(山田風太郎:原作、サメマチオ:著/徳間書店)。本書は、紀元前から昭和に活躍した120人の“意外な死に方”をつづったコミックエッセイ。原作本の一節を引用しながら、著名人の人柄をコミカルなタッチで紹介している。さらに、原作者・山田氏のクスっと笑える文章センスを、著者の視点でさらに深掘りしているのもおもしろい点だ。
堅苦しい歴史や偉業を通してではなく、ひとりの人間として著名人を知ることができれば、歴史はもっと身近な存在になる。名だたる著名人の死に際には、果たしてどんなドラマがあったのだろうか。人が死んだ後にどう扱われるかは自分自身では決めることができない。だからこそ、1日1日を後悔しないように生き抜いていこうと思わせられるのだ。
■自信家のエジソンが放った“最期の言葉”とは?
エジソンといえば、多くの失敗を繰り返しながらも成功を掴んだ天才。「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」という彼の言葉は、知らない人がいないほど有名だ。
そんな彼はポジティブで自信家。失敗をしても、それを失敗と認めようとしない強情さも持ち合わせていたユニークな人物だったそう。だが、エジソンが最期の瞬間に放ったという言葉には彼の印象をガラっと変える力がある。死を迎える日、エジソンは未明に一度目を覚まし、妻・ミーナの「苦しいですか」という問いに対し、こんな穏やかな言葉を返したという。
“いや、待っているだけだ。”
まるで自分の死期が分かっているかのように、彼は静かに死を受け入れようとしたのだ。強情で負けず嫌いなイメージもある人物だが、ひょっとすると本来の性格は穏やかで、発明に注ぐ情熱が人柄の印象を変えてしまうほど熱かっただけなのかもしれない。――そう考えると、エジソンが愛を込めて生み出した発明品も愛おしくなってくる。
■闇に葬り去られた、アインシュタインの遺言
死はある日突然訪れる。だから、最期の時に伝えたい想いを満足に届けられないことも多い。アインシュタインも実はそのひとりだ。
彼は死の数時間前に、看護婦にドイツ語で最期の言葉を伝えたという。しかし、その看護婦はドイツ語が分からなかったため、20世紀最大の科学者と呼ばれる彼の遺言は永遠に葬られてしまったのだ。もしこの時にアインシュタインの言葉を聴ける人が近くにいたなら、歴史は今とまた違う道を辿っていたのかもしれない…。
人の本質が表れる「死に際」を繋げて見ていくと、ひとつの人類史になる。本作を通して、生の光の裏にある“死の影”を知ると、あなたもきっと自分の死生観を見つめ直したくなるだろう。
文=古川諭香