「困ったお客様」がたくさん訪れるコンビニだけど、幸せがいっぱい! そんな「困る」けど「かわいい」お客様とは──?
公開日:2019/5/22
最近、「コンビニ」に関する話題がよくニュースで取り上げられている。24時間営業の見直しや、バイト店員の不適切行動を撮影した動画のネット公開など、あまりいい話題ではないのだが……。他にも大量の小銭で支払いをする「困ったお客様」のニュースなんかも耳にしたが、とにかく大変そうな印象である。しかしもし、その大変さがまったく苦にならないとしたら……? 『あああ!! お客様困ります!!』(「おきゃこま」委員会/小学館)では、そんな夢のような「コンビニ事情」が描かれているのだ。
では、その「困ったお客様」がまったく苦にならないシチュエーションとはどのようなものか。それは、とある山の中腹にある一軒のコンビニで発生するさまざまな出来事のことで、なんとそのコンビニの「お客様」は、ほとんどが「動物」のお客様なのである。しかしよく考えれば、人間だろうが動物だろうが客の「困った行動」は店員にとっては迷惑なはず。なぜそれが苦にならないのか……?
それはズバリ「かわいいから」である。想像していただきたい。コンビニの前で人間がたむろしていたらウザいだけだが、もしそれがネコだったら……? その微笑ましさに思わず目を細めてしまうこと間違いなしであろう。そう、本書は「お客様困ります!」とかいいつつも、実は動物たちとのコミュニケーションを楽しむ店員の姿を描いた物語だったのだ。
では一体、どんな「困ったお客様」がいるのか。雨に濡れた体で入ってきて、店内でブルブルと水を払ってしまう「しばいぬ」さん。箱とみれば何でもかんでも入ってしまう「ねこ」さん。店のあちらこちらで「かくれんぼ」をしてしまう「パンダ」さんなどなど。そういえばかつて、コンビニのアイスクーラーに店員が入り込む迷惑動画が話題になったことがあったが、本書で寝そべるのは「ペンギン」さんだ。かわいらしくて、注意しづらい……!
そしてコンビニの店員さんと動物の「お客様」との交流は、春夏秋冬、季節のイベントにまで及ぶ。春には駐車場で宴会する「お客様」たちに困り、夏にはセミをくわえて来店する「ねこ」さんに困り、秋は「ハロウィン」のイタズラにこま……ることはなく、お菓子をあげて巧みに回避。冬には正月に「お客様」たちが、店員に挨拶をしにきてくれる。山の中のコンビニはみんなが満足できる、幸せの空間なのだ。
最近は時給を上げても、コンビニのアルバイトはなかなか集まらないという話を聞く。もちろん「困ったお客様」もその一因なのだろうが、ならばそういう客を「かわいい珍獣」として考えられないだろうか。酔っ払ってクダを巻く「珍獣」に対し、「お客様困ります」といって水でも差し出す神対応も、それならできそうな気がする。そんな風に考えること自体、難しい? ……まあ、そりゃそうだ。
文=木谷誠