戦隊ヒロインが惨殺されていく衝撃の展開に震える! 異色のヒーローコミック、ここに開幕!
更新日:2019/5/28
昭和から現在の令和に至るまで、「正義の味方」は時代を超えて支持されるものである。その中でも「スーパー戦隊シリーズ」と呼ばれる特撮作品は、チームで戦うスタイルで人気を博し40年以上の長寿シリーズとなった。そしてこの「戦隊」に欠かせないのが「ヒロイン」たる「女性隊員」の存在だ。スーパー戦隊の隊員たちにはそれぞれ「色」が割り当てられるが、女性隊員は主として「ピンク」である。そんな「ピンク」の女性ヒーローにスポットを当てた異色コミック、それが『ピンクロイヤル (1)』(あまのあめの/ジーオーティー)だ。
物語は普通の女子高生・松山桃美が突然、元いた世界とは違う場所に転移するところから始まる。彼女が倒れていた場所には、他にも巻き込まれた女性たちがいた。そこへ現れたのは、「ゴブリン兵」と呼ばれる多数の怪人たち。ゴブリン兵は持っていた武器を振りかざすと、その場にいた女性たちを手当たり次第に惨殺し始める。逃走する桃美にも危機が迫るが、彼女は自身の腕に「特撮ヒーロー」の変身アイテムが装着されていることに気づく。それを使用することによって、桃美は「ブキレンジャー ピンクアロー」へと変身するのであった――。
本作でまず衝撃を受けるのは、女性たちの惨殺シーンであろう。訳も分からず見知らぬ世界へ連れてこられた女性たちは、いきなりゴブリン兵たちに襲撃されるのだが、その殺されかたが凄まじい。ある者は脳天から真っ二つにされ、ある者は胴をなぎ払われる。内臓は飛び散り、まさに地獄絵図のような凄惨さだ。桃美を助けてくれた女性も、ゴブリン兵に頭部を切断され、殺されてしまった。そんな極限状態の中で、桃美はピンクアローへの変身を果たしたのだ。
ピンクアローとなった桃美はゴブリン兵を倒していくが、さらなる強敵が現れる。「サイコロップス」というその怪人には、ピンクアローの攻撃が通じなかった。絶体絶命の桃美だったが、そんな彼女を救ったのは「アルファベッターXピンク」と名乗る、新たなる「ピンク」の戦士だった! ひとりひとりの力ではサイコロップスに及ばなかったが、ふたりが力を合わせることによって、なんとかサイコロップスの撃破に成功。そして変身を解いた桃美と「Xピンク」の渚ひろ子の前に、自らを「司令」という男が現れる。
司令によって彼らの拠点である「教会」へ連れていかれた桃美たちは、そこで事情を聞かされる。彼女たちは「女神メリカ」によって選ばれた戦士であり、敵である「ムゲンジュウ」を倒すことが使命なのだという。戦う理由など一切明かされないまま、新たな戦場へと送られる桃美たちだったが、3体の怪人「オーク将軍」の前に敗北してしまう。捕まった彼女たちが連行された先には、他にも捕まった「ピンク」の戦士たちの姿があった。オーク将軍の退屈しのぎに戦わされ、殺されていくピンク戦士たちを見て怒った渚ひろ子は、自ら対戦を申し出る。実はひろ子には、ある「確信」があった。
その「確信」とは、この世界が「戦隊モノの決まりごとを順守している」ということだ。「子どもの頃のような純粋な気持ち」で変身すれば、ムゲンジュウを圧倒する力を得ることができる。オーク将軍と戦い窮地に陥るひろ子を救うため、ひろ子がいうような「純粋な気持ち」で変身する桃美。その力は3体のオーク将軍をたやすく粉砕してみせるのだった――。
本書には、作者の「ヒーローものに対する想い」のようなものが詰まっていると感じる。ピンク戦士が惨殺されるのは、実際に「スーパー戦隊シリーズ」でも女性隊員が戦死する作品があり、その影響もあるのだろう。そして大人になっても「純粋な気持ち」をなくさないでいたいという想いが、変身の設定となって表れたのかもしれない。ピンク戦士が無残に死んでいくという子供向けではできない作品を、大人になった今「子どもの頃のような純粋な気持ち」と共に描いている――そういう気がしてならない。
文=木谷誠