ママよ、恐れず勝負せよ! AI時代を子供と生き抜くには教育ママより勝負師ママ
公開日:2019/5/29
これから社会システムが大きく変わり、新たな仕事が生まれる一方、既存の仕事がなくなっていくといわれる。躍動する社会を生きるために、柔軟性や適応力が必要になると見られている。
かつて、香港は度重なる政権の変化があり、その度、人々は貯金や土地、名声などが一夜で無価値になる経験を味わってきた。こういった不安定な社会で、父に教育の重要性を聞かせ続けられた女性…それが『未知に勝つ子育て:AI時代への準備』(アグネス・チャン/小学館)の著者、アグネス・チャン氏だ。氏の教育に対する考え方は、躍動の時代における子育てや教育の参考になりそうだ。
新しいスマートフォンが出たとき、「ああ、また出ちゃった」と思う人と、「また新しいのが出た! 買ってみよう、やってみよう!」と思う人がいる。これからの躍動の社会で、子どもを力強く育てられるのは、どちらの考え方をもった人だろうか。本書は後者だと述べる。
新しい物事を恐れないこと。これが、これからの母親に求められる資質だ。本書は、このような母親を「勝負師ママ」と呼ぶ。
子育てとは、親が子どもを幸せにするために、未知に向かって賭けをする行為です。
世界市民、地球市民という言葉がある。グローバルな社会の中で、私たちは否応なしに世界との繋がりを感じ、その一員であることを思い知らされる。本書は、これからの子どもたちはもはや世界市民、地球市民の枠には収まらないと考える。各国の宇宙開発競争が激化し、そのうち「宇宙市民」になる可能性がある。本書によると、生まれながらに保守的な子どもはいない。親が新しい環境、技術、知識を恐れるから、子どもも保守的になると述べる。やはり「勝負師ママ」が子どもの未来を切り開く。
子どもは、チャレンジングな環境であるほど、学ぶ意欲を高める。そして、「意欲的である」などの性格的な特徴は、脳のシナプスが一番多く作られる8歳までに形成される、としている。そのため、特に8歳までは、チャレンジングな環境を用意してあげたい。同時に、環境の「退屈」を撃退したい。
実際、アグネス・チャン氏は、子どもの「学ぶ意欲」を壊す「退屈」を、さまざまな方法で撃退した。例えば、氏は早々におもちゃ、テレビ、ゲーム、マンガを放棄した。物がなければ、子どもは頭をひねる。そして、特別な道具を必要としない遊びのアイディアをすぐに思いつき、どこでも退屈しないようになる。「退屈しないようにおもちゃやテレビを…」とは逆の発想で、子どもから早々に「退屈」を取り去った。
氏は、このほか、子どもの遊びを“バージョンアップさせる”、親が本気になって遊び、子どもに“勝負の態度を身につけさせる”などして、「退屈」を撃退しつつ、子どもの学ぶ意欲を高めていった。
親子で未知との勝負に勝つヒントが、本書に数多く収録されている。
文=ルートつつみ