仮想通貨、ブロックチェーン、キャッシュレス決済…。お金はこれからどう変わる?
公開日:2019/5/31
これまで、支払い方法は現金かクレジットカードが主流だった。しかし近年、その流れが大きく変わってきている。特に普及しつつあるのが、キャッシュレス決済だ。海外ではすでに現金決済よりもメインになっている国もあり、日本でも急速に普及が進んでいる。また、仮想通貨の登場により、これまで常識だったお金についての考え方にも大きな変化が起こった。
かつてインターネットの発展とともに情報リテラシーの重要性が叫ばれたように、お金の転換期を迎えた今、お金についてのリテラシーも身につけなければならないだろう。『いま知っておきたい「みらいのお金」の話』(松田 学/アスコム)には、未来のお金事情が詳しく書かれている。
本書では、仮想通貨と電子マネーの違いや仮想通貨・ブロックチェーンのシステムなどといった基本的な内容から、仮想通貨が生み出す新しい経済効果や実際の使い方、それらが普及した未来の経済までわかりやすく解説。今後やってくる新しい社会や経済の仕組みにもしっかり対応し、それらを存分に活用しながら生きていけるようになるための手助けをしてくれる1冊だ。
仮想通貨はまだ歴史が浅いため、言葉自体は知っていても具体的にどのようなものなのかわからないという人も多いだろう。本書は現金派のカナちゃんと「みらいのお金」専門家であるマツダ先生との対話形式になっており、カナちゃんがマツダ先生のもとへ「みらいのお金」について尋ねに行くところから始まる。仮想通貨初心者に向けて一から説明してくれるので、仮想通貨の知識が全くない人でも読みやすい。よくわからないからと今まで敬遠していた人も、これを読めば見方が変わるのではないだろうか。
また、仮想通貨について語るときに切り離せないのが、ブロックチェーンという新しい技術だ。ブロックチェーンはデータベースの一種で、「分散型台帳技術」と訳される。仮想通貨はこの技術のおかげで成り立っているといえるのだ。このブロックチェーンの特徴は、データを複数のデータベースに同時に記録すること。これまでは元のデータが改ざんされてしまい不正が発生する危険性があったが、ブロックチェーンならデータが複数の場所に記録されているので、ひとつのデータがAからBに改ざんされていても、そのほかのデータがAとなっていればどちらが正しいかは明らかだ。この改ざん不可能なデータベースのおかげで仮想通貨の取引に不正が起こることはないとされている。
不正といえば、かつて仮想通貨の流出事件が起こったことを思い出す人もいるだろう。本書によれば、仮想通貨が流出したのはブロックチェーンのシステムではなく、仮想通貨取引所のセキュリティに原因があったのだという。現金を銀行口座に預けるのと同じように、仮想通貨も取引所の口座に保管している人が多い。しかし取引所のセキュリティが甘かったためなりすましが発生し、流出につながったのだ。取引所のセキュリティ技術は現在も技術刷新が進められている。
さらに、このブロックチェーンの登場により、近い将来「ブロックチェーン革命」が起こると述べている。ブロックチェーンシステムと仮想通貨があれば、今まで別に行っていた証明書・契約書などのデータ管理や手続き、それにかかる支払いを同時に行うことができるのだ。これを「スマートコントラクト」といい、行政コストの削減と効率化が期待できるという。
キャッシュレス決済もまだまだ普及途中である現時点では、仮想通貨やブロックチェーンがどれだけ広まっていくかを予想するのは難しい。安全面や法整備の課題もあるだろう。しかしそれらさえ解決できれば、より社会を便利にしてくれる可能性を秘めていると感じた。新しい社会を迎えるときに備え、本書を通して「みらいのお金」の知識を身につけてみてはいかがだろうか。
文=かなづち