「ばいきんまん」のオーディションに山寺宏一もいた! 声優界のレジェンド中尾隆聖が語る『声優という生き方』

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公開日:2019/6/2

『声優という生き方』(中尾隆聖/イースト・プレス)

 いまや押しも押されもせぬ人気職業となっている「声優」。若年世代の声優もどんどん登場している一方で、還暦を超えてなお現役で活躍している人が多いのも、声優界の特徴です。60年以上のキャリアを持つ中尾隆聖さんもそのひとり。あまりマンガやアニメに触れない人でも『それいけ!アンパンマン』の「ばいきんまん」や『ドラゴンボールZ』の「フリーザ」と聞けば、頭の中で声が再生される人も多いのではないでしょうか。

 先日、彼の半生を振り返った『声優という生き方』(イースト・プレス)が発売されました。本書は、3歳で児童劇団に入団し、5歳で文化放送のラジオドラマ『フクちゃん』のキヨちゃん役でデビューを果たした中尾さんの役者人生を軸に、演技論や仕事に対する姿勢をまとめた、中尾隆聖の解体新書。

 中尾隆聖史上、もっとも長く演じ、中尾隆聖を代表するキャラクター「ばいきんまん」についても、思いの丈を綴っています。放送開始当初は、30年も続くとは思っていなかったという中尾さんにとって、名刺代わりの作品となっているとのこと。長年共演している声優のなかでも、中尾さんが「天才」と称するのが山寺宏一さん。

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「私は彼がデビュー間もない頃から『それいけ!アンパンマン』で共演していますが、じつは彼もばいきんまんのオーディションを受けていました。もう、いまだったら間違いなく山寺さんですよ。彼は結局、めいけんチーズの役で参加することになりましたが、カバおくんやかまめしどんなど、別のキャラクターも複数担当しています。(中略)ガヤだろうが小さな役だろうが、彼がやるとキャラがいきいきと存在感をもちはじめる。そういうことができるから、いまこれだけ人気者になったんだと思います」

 そして「いまや声優業界でトップスターである彼を犬(めいけんチーズ)として使っているのはうちの番組くらいです」と、中尾さん。とはいえ、犬からかまめしまで山寺さんの天才ぶりを見ることができるのも『アンパンマン』の魅力なのかもしれません。また、ばいきんまんの有名なセリフが「中尾さんのアドリブだ」という噂についても言及しています。

「ちなみに、ばいきんまんの、『ハヒフヘホ〜ッ!』は、私のアドリブではありません。台本に『ハヒフヘホ』ってちゃんと書いてありました。まあ、台本に『ハヒフヘホ』って書いてあったら、どうしようかって思いますよね。それをああいう言い方にしようと考えたのは私ですが。洋画の吹き替えは生の役者に合わせるのが前提ですが、アニメにはひとつのセリフでもどういうふうに演じてやろうかな、という命を吹き込む作業があります。そういうのが面白いんです」

 同じく「出たなおじゃま虫」も、アドリブではなく台本に書かれたセリフとのこと。中尾さんがおこなったのは、セリフに命を吹き込む作業だったのです。ウィキペディアの中尾隆聖さんのページを修正する必要があるかもしれません。

 声優界のレジェンドこと中尾隆聖さんの“生き方”が詰まった『声優という生き方』。声優を目指す人はもちろん、往年の中尾キャラに思いを馳せたい、というファンも存分に楽しめる一冊です。

文=丸井カナコ