上司に「NO」を言いたいときに使える!「ヤクザ式心理術」とは?
公開日:2019/6/3
誰しも「一目置かれたい」という願望は抱くもの。とくにビジネスシーンにおいては、取引相手に一目置かれて「ただ者ではない(図太い)」と思われることで、交渉が優位に進む場合も多い。『ヤクザ式 図太く生きる心理術』(イースト・プレス)は、ジャーナリストで浄土真宗本願寺派僧侶、保護司……と、さまざまな顔を持つ作家・向谷匡史氏による“図太く生きる”ための処世術が綴られた、新感覚ハウツー本。
向谷氏は、かつて週刊誌の記者としてその筋の人々と接する機会が多かったため、ヤクザたちが自らを図太く演出している様子を間近で目撃してきたという。
「ヤクザの誰もが武闘派というわけではない。(中略)だが、ナメられたら終わりという絶対条件がある。だから慎重派であっても、服装、態度、物腰、目の配り方、ブラフ、会話の切り返しなど、経験則に裏打ちされた実践心理術で『怖い』『図太い』『ヤバイ』を演出するのである」
自分の存在そのものを図太く演出することこそ、周囲から一目置かれるひとつの方法だと提案する。同書に紹介されている心理術の一部を紹介しよう。
■目上に一目置かせる「ノーの図太さ」
目上の人に「ノー」が言えない、と揶揄されることの多い日本人。しかし、上司の提案に意見を求められたときに、さすがに無理難題だと思って「ノー」を言えば、相手が機嫌を損なうのは目に見えている。そのため、つい「イエス」と答えてしまった経験がある人も多いだろう。
向谷氏は「ヤクザ社会に『ノー』の返答は存在しない」と言う。しかし、親分の命令にすべて「イエス」で答える若い衆は、飼い犬と同じで「『イエス』『イエス』と尻尾を振っているうちに貧乏クジを引かされ、詰め腹を切らされるのがこのタイプ」と指摘する。のし上がるヤクザは、ときに図太く「ノー」を言うことで“存在感”を高めて貧乏クジを回避するのだ。そんな彼らが実践しているのは「ノーを言わずしてノーを言う」こと。
向谷氏は関西P組の親分が「おう、事務所に拳銃(チャカ)撃ち込んだらんかい」と、U幹部に命令した際のエピソードを例に「ノーを言わずしてノーを言う」方法を紹介している。
「だけど親分(オヤジ)、いまやると、ウチの仕業やいうて、すぐわかりますぜ」
とU幹部が異を唱えたとしたら、
「そんなことわかっとるわい!」
親分は烈火のごとく怒るだろう。
U幹部はこう言った。
「名案でんな。向こう、ビビりまくりますわ」
イエスの返事でよいしょしておいてから、
「だけど親分、いまやるとウチの仕業やいうて、バレまへんやろか」
問いかけというスタイルで婉曲に異を唱え、判断を親分にまかせることで顔を立てたのである。
親分はU幹部の問いかけを「それもそやな」とすんなり受け入れ、事なきを得たという。ただノーを言うのではなく、一度肯定したあとに“前向きな懸念”を伝えるのがコツなのだとか。この心理術をビジネスシーンに応用すれば、上司を怒らせずに「ノー」を伝えられるはずだ。
ヤクザとカタギ(一般人)は住む世界が異なるが、人間社会という枠では同じ場面も多いだろう。そんなとき、ヤクザ式の「図太さ」を身に着けておくと、周囲から一目置かれる存在になれるかもしれない。
文=とみたまゆり