成功の秘訣は親への感謝だった! 母への感謝を綴った話題のエッセイ集とは?
公開日:2019/6/12
日頃の感謝の気持ちを込めて、母の日にカーネーションを贈る人は多いだろう。照れくさくて伝えにくい思いも、花束とメッセージカードに助けてもらうことができる年に一度の機会だ。異業種交流会・VAV倶楽部を主宰する近藤昌平氏は、仕事柄、一流の経営者や文化人たちに会う機会が多いそうだが、その中で成功をおさめている人ほど両親の教育や躾の良さを感じるという。そこで、これらの人々を対象に母親への思いをエッセイに綴ってみないかと声をかけて生まれたのが本書『成功する人は、必ずお母さんを大切にしていた。』(近藤昌平/PHP研究所)だ。
対象となったのは30~50代の経営者や個人事業主、ビジネスパーソン、文化人など総勢116名。集まったエッセイを見て著者がまず感じたのが、どれも「母親に対してストレートな思いをぶつけている」ということだった。若い世代のエッセイも多く掲載されているが、「若い世代の日本人も捨てたもんじゃない」と感動を覚えたという。アソビシステム株式会社代表取締役・中川悠介氏のエッセイでは、小さい頃から何でも自由にさせてくれた母親への感謝が綴られている。大学卒業後、就職をせずに先輩と会社を起こした彼は、3年で会社を潰してしまうのだが、その際にも再び起業しようとする彼を母親は何もいわずバックアップしてくれたという。当座は母親に食べさせてもらう日々が続きながらも、現在の地位を築いていったそうだ。そんな中、彼の習慣となっているのが2カ月に一度は実家に戻り、母親と食卓を囲むこと。母親はたくさんの手料理を用意し、彼はお腹いっぱい食事をしてただひたすら寝るという。独立するとなかなか実家へ足が向かないという人が多い中、母と息子が共有する大切な時間となっているのだろう。
本書には、「亡き母」への感謝状も多数掲載されている。ブックライター・上村氏の母親は、フォークダンスの指導者として全国を飛び回っている忙しい人だった。そのため、幼少期には大変寂しい思いをし、母親を恨んだこともあったという。しかし、自身が2児の母となった今、当時忙しい中で母親が自分たちのためにいかに一緒に過ごす時間を工面してくれていたのかがわかったそうだ。その後、25歳で結婚しタイで新婚生活を送った上村氏は、その年に突然の病で母親を亡くしてしまう。母親亡き後は、出産時になると母の友人たちが代わる代わる手を差し伸べてくれ、1カ月以上にもわたり「里帰り」と称し自宅で面倒を見てくれた人もいたというから驚きだ。なぜこんなにも親切にしてもらえるのかと尋ねると、母親にお世話になったからという理由が返ってきたそう。母親が残した恩や縁に支えられていると実感する日々だと語る。
これらのエッセイを読んでいると、多くの人の母親に共通する母親像が見えてきた。母親とはまず子どものことを第一に考え、自分の自由を犠牲にしてでも子どもに不便を感じさせたくないと思っている人物なのだろう。いや、そもそも自分を犠牲にしているという感覚すらないのではないか。周りの友人を見回してみても、「自分よりも子どもが一番だ」という人ばかりだ。そんな思いで育ててもらったことを、残念ながら子ども自身はあまり理解しておらず、自身が親になったときや親を亡くしたときなどに気づくことになる。
私も毎年、母の日には花を贈るか食事に誘うようにしているが、日頃遠慮しがちな母がこの日ばかりは遠慮なく「ありがとう」とうれしそうにしているのを見るのは私自身もうれしい。しかし、本書のエッセイのように、素直な言葉で感謝の気持ちを伝えることは大切だと痛感した。あまりにも近すぎるために言葉にしなくてもいいと思いがちだが、言わなければ伝わらないこともある。口で言うのが恥ずかしければ、文章にして手紙として渡すのもいいだろう。自分を生み育ててくれた母親に感謝することは、自分自身を大切にすることにもつながると感じた。母親を大切にする人に成功者が多いのも納得できる。まずは、母の誕生日に感謝の手紙を綴ろうと思っている。
文=トキタリコ