「センスの良い日本語」がきっと身につく! イラストで学ぶ新感覚日本語辞典

文芸・カルチャー

公開日:2019/6/15

『言の葉連想辞典』(遊泳舎:編、あわい:絵/遊泳舎)

 近年、語彙力を高めることにスポットを当てた教養本が話題になっている。しかし、本当に語彙を身につけようとするなら、付け焼刃の表現を習得するだけでは不十分。ボキャブラリーを増やすことが大切だ。そこで参考にしたいのが身近な言葉の役割をぐんと格上げしてくれる『言の葉連想辞典』(遊泳舎:編、あわい:絵/遊泳舎)だ。

 一般的な分厚い辞書を大型のショッピングセンターにたとえるなら、本書はいわばあなたのセンスにぴったり寄り添う“セレクトショップ”のような存在。日常を少し豊かにしてくれる500の言葉を、「自然」「感情・行動」「色」「場面・その他」という4ジャンルに分け紹介する。

 人とコミュニケーションを取るときにどんな言葉を使うかによって、あなたの印象はガラリと変わる。日本語には同じ意味合いで違う響きを持つ言葉がたくさんあるからこそ、本書を通して、日常的に使う言葉を、そしてあなたの品格を上げてみよう。

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■あなたはいくつ知ってる? 幻想的な夏ワード8選

 突然だが、あなたは夏を連想させる言葉をいくつ知っているだろうか。蝉や向日葵、花火など夏の風物詩となる単語は頭に浮かんできやすい。しかし、「空蝉(うつせみ)」というワードが出てくる方は、少ないのではないだろうか。

「空蝉」とは、蝉の抜け殻のこと。夏の終わりになると至る所で見かけられる蝉の抜け殻には、こんな幻想的な名称がつけられているのだ。そして、「空蝉」という言葉にはもうひとつ、奥深い意味がある。実は「この世に生きている人」や「この世」のことも「空蝉」と呼ぶそう。そう知ると、今までなんとなく眺めていた蝉の抜け殻に、ついこの世の無常を重ねてしまいそうだ。

 身近な表現が、まったく知らない響きの言葉に変わる。本書の醍醐味は、そこにある。本書では、夏を彷彿させる言葉を8つ紹介している。

 あなたは、紹介されている綺麗な言葉をいくつ耳にしたことがあるだろうか。

■好印象を与えたい時こそ、言葉を鍛えよう

 私たちの感情は喜怒哀楽で表現されることが多いが、実際はもっと複雑で奥深く、4語だけでは表しきれないこともある。そんな時に本書の「感情・行動」に記されている言葉を知っていると、自分の気持ちをより正確に伝えることができるかもしれない。

 たとえば、“喜の感情”は「うれしい」や「楽しい」という言葉で表されやすいが、ボキャブラリーを増やすとうれしさの理由や度合いまでをも正確に伝えられるようになる。

 周りと差がつく感情表現が身につけば、ビジネスや恋愛など、あらゆる場面で自分の存在をより深く相手に印象付けることができるようになる。そうすれば、一時的な印象だけでなく、あなたの人生もちょっとずつ変化していくはず。言葉にはそういう力もあるのだ。

 文字とイラストの両面から日本語のおもしろさを改めて教えてくれる本書は、何度も読み返したくなる新感覚の辞典。シリーズ第3弾となる本書だけでなく、恋愛にスポットを当てた第1弾の『ロマンスの辞典』(望月竜馬:著、 Juliet Smyth:絵)や人間の本質を問う言葉がぎゅっと詰め込まれている『悪魔の辞典』(中村徹:著、Yunosuke:絵)も刊行されているので、ぜひこちらも併せてチェックしてみてほしい。

文=古川諭香