超ドロドロ展開に昼ドラも真っ青…世界最古のラブストーリー『源氏物語』がおもしろい

マンガ

公開日:2019/6/15

『源氏物語〜愛と罰と〜』(森猫まりり/小学館)

 世界最古の恋愛長編小説といわれている紫式部の『源氏物語』。とくに若い人は、その名前を耳にしたことはあっても実際に本編をすべて読んだことがある、という人は少数派かもしれません。古典文学を読むというハードルの高さに加えて「大昔の話だし、きっと内容も難しいんだろうな」なんて、固定観念にとらわれている大和撫子も多いはず。もちろん古文を読む難しさもありますが、源氏物語は昼ドラも真っ青の愛憎うずまく内容のおもしろさから、古今東西多くのファンがいる作品でもあります。

 まずは気軽に『源氏物語』に触れてみたい、という人には森猫まりり先生が描く『源氏物語〜愛と罰と〜』(小学館)はいかがでしょうか。そこで本稿では、同作をもとに源氏物語の魅力をご紹介します。

■ドロドロポイント:後宮内のいじめ

 舞台はもちろん、平安の世。同作は、主人公・光源氏の両親の出会いから描かれます。のちに光源氏の母となる桐壺更衣は、父を亡くし“後ろ盾”がない身分の低い貴族として、後宮に上がりました。後宮とは、后妃とそれに仕える女官が生活する場所。名だたる名家出身の皇后たちが住む後宮のなかで、桐壺更衣は陰口を叩かれて肩身の狭い日々を過ごしていました。

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 しかし、のちに光源氏の父となる帝が飼っている猫を、桐壺更衣が保護したことをきっかけにふたりは急接近。帝は毎晩のように桐壺の元を訪れ、愛を育みます。

 帝の寵愛を受けまくる桐壺に対して嫉妬心をたぎらせた、弘徽殿女御は「そろそろあの小娘に自分の身分をわからせてやらねば…」と、悪役めいたセリフを吐いて、桐壺を後宮の一室に閉じ込めます。

 その夜、約束の時間を過ぎても桐壺が現れないことに不安を覚えた帝は、自ら宮中を捜索。部屋の中で冷え切った体でこごえている桐壺を発見し、怒りに震えます。

 身分の差を乗り越えて愛し合った帝と桐壺。ふたりは美しい男の子をもうけましたが、体が弱かった桐壺は、出産から数年後に命を落とします。生まれた若宮は、光る君こと「光源氏」と名付けられ、本編がスタートします。身分違いの恋に、嫉妬によるいじめ…プロローグから王道の展開ですね。

■ドロドロポイント:許されぬ愛

 美しく成長した光源氏。彼の前に現れたのは、母と瓜二つの女性・藤壺でした。藤壺は、父である帝の新たな皇后として後宮に上がってきたのです。そんななか、幼い光源氏はひとりの女性として藤壺に恋をしてしまいます。一方の藤壺は、自分と亡き桐壺の姿を重ねる帝に対し、切ない想いを抱えていました。

 数年後、光源氏の元服の日が近づきます。元服とは、子どもから大人になる通過儀礼のこと。元服を迎えると光源氏と藤壺は離れ離れになり、会うこともできなくなります。藤壺に会えなくなる、という想いが募った光源氏はついに彼女を押し倒し、想いを伝えます。

「あなたを一度も母として見たことなんかなかった 好きです 初めて会った時からずっと」

 自らを“桐壺の代わり”と感じていた藤壺は、誰の代わりでもなく自分を愛してくれた光源氏の真剣な眼差しに動揺し、彼への想いがふくらんでいきます。もちろん、皇后の自分が帝の御子と恋に落ちるなんて許されるはずがない、と藤壺は光源氏を拒みます。

 しかし、元服後、妻をめとり、美しさと色気を兼ね備えた超絶イケメンへと進化した光源氏は、愛しの藤壺さまに「最後の手紙」を贈ります。この手紙を読んだのち、藤壺は光源氏の子どもを身ごもることになるのです。

「え!? なんで光源氏の子どもを妊娠したの!? 超展開じゃん!」と、みなさん驚いたことでしょう。私も驚きました。しかも、その子は帝と藤壺の子として育てられるのです。許されぬ愛と、不義の子…序盤から、かなりドロドロしてきましたね。超展開のウラ側を知りたい人は、ぜひ同作を手にとってみてください。『源氏物語』へのイメージが、一気に覆るかもしれませんよ。

文=丸井カナコ