東大に文理両方で合格した男が、「日本史」にかくされた「数字の怪」を大マジメに考察してみた。
公開日:2019/6/20
理系男が日本史を勉強してみたら…
私は、「東大に文理両方で合格した男」と名乗っている。
元々はバリバリの理系だったのだが、社会人になってふと思ったことがある。
「あれ? 社会で生きていくには、文系科目も必要じゃね?」と。
そこで「1年で東大文系に合格プロジェクト」を立ち上げ、宣言通り合格。
その後、東大受験専門塾を開講し今に至る。
東大文系を受験するときには日本史を選択したのだが、その時に気付いたことが2つある。
1つは、理系的な考え方が、日本史の勉強にかなり通用するということだ。
日本史の勉強と言えば、無味乾燥な暗記をひたすら繰り返すイメージがあると思うが、理系は違う。
因果関係がつかめないと先に進めない。
なぜ聖徳太子は十七条憲法を作ったのか、なぜ徳川家康は江戸幕府を作ったのか。
数学で公式を使う理由が分からないと式が立てられないのと同じで、日本史にも「なぜ」が大事だったのだ。
疑問を解消して納得できないと気が済まない姿勢が、日本史の勉強で大いに役立った。
そしてもう1つ。これが今回強く言いたいことなのだが、
日本史を数学的に考察すると、かなり面白い!!!
日本史と数学。
一見すると対極の組み合わせ。
絶対に共鳴しない。
かみ合うはずがない。
そう、食べ物に例えるなら、天ぷらとスイカの如し。
しかし、それはあなたの食わず嫌いにすぎない。
じつはお寿司とわさびのような、絶妙なハーモニーを醸し出すのが、日本史×数学のコラボなのである。
「八百万の神」は800万いない?! 千手観音の手は千本じゃない?!
ということで今回は、数学好きが日本史を学びはじめると、考えずにはいられない「数字の怪」をご紹介しよう。
そもそも、日本史に登場する数字は適当なことが多い。
例えば、日本には八百万の神(やおよろずのかみ)がいるとされるが、この800万というのは適当な数。
本当に800万ピッタリではなく、「たくさん」くらいの意味しかないそう。
そういえば、八百屋にも800種類の野菜は置いてない。
なるほど、歴史的には「八百」には「たくさん」という意味がありそうだ。
しかし、数学では「たくさん」なんていう曖昧な概念は通用しない。
800万は800万。
801万でも、799万でもなく、本当に800万ピッタリの神様がいると考えたら……。
ということで、ここからは数学的考察を。
まずは面積で割ってみよう。
日本の国土は37.8平方キロメートル。
ここに800万の神様が均等にならんだとすると、1平方キロメートルに約21人の神様という計算になる。
おお、これは結構多いぞ! と言ってもピンとこない方のために比較をしてみよう。
日本中、至るところにあるといえば、コンビニ。
日本にはコンビニの店舗が約5万5千店あると言われているので、800万÷5万5千をしてみると、約145。
つまり、コンビニの約150倍の神様がいることになる。
イメージしてみよう。
あなたの家の最寄りのコンビニに行くまでに、150人の神様に遭遇する映像を。
全員が天照大御神(あまてらすおおみかみ)のような優しそうな女神だったら良いが、150人もいれば、須佐之男命(すさのおのみこと)のようなのにも頻繁に出会うだろう。
これはかなり怖い。
なにせ須佐之男命は、皮を剥いだ馬を、巫女たちにむかってぶん投げたり、神殿に糞をまき散らしたりと粗暴で有名な神様。
逃げる。絶対に逃げる。
しかし近所のコンビニに行くのに150人とすれ違うとなると、どの道を通ったって必ず出会う。
アレをまき散らされたら、どうしよう。
これでは家から出られない。
そうか、これが神様を畏れ敬うということなのか(←絶対違う)。
そして、同じノリなのが千手観音。
実際には手が42本しかない。
千手観音の「千」も「たくさん」という意味で、たくさんの手段で人々を救うという意味だそうだ。
こういうのに出会うと、数学好きはモヤモヤする。
「たくさん」なんて認められない。
本当に1000本の手が生えているとしたらどうだろう。
前から見ると、クジャクみたいに手が見えるのだろうが、背中から見ると…ちょっと気持ちわるいので、これは深追いせず次に進もう。
56億7000万年間悩む菩薩
日本の国宝第1号で有名な京都市広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)もすごい数字の持ち主。
右脚を上げて組み、右手の指を軽く右頬に触れ、56億7000万年も悩みごとをしているというのだ。
……ちょっと待ってくれ。
地球が誕生するより前から足を組みつづけているだと!?
数学好きは、こういう数字は見逃さない。
すぐに自分の知識と結びつけて、あーだこーだ考え始めてしまう。
地球が誕生したのは、今から約46億年前と言われている。
ということは、弥勒菩薩は地球が誕生する前に、すでに10億7000万年も修行をしている。
地球が誕生する前はどこにいたのか。
そしてなぜ今、地球で悩み続けているのか。
もしかして、悩んでいるのは、元の星に帰れないということなのか。
弥勒菩薩よ、行動せよ。
悩んでも問題は解決しない。行動あるのみだ。
そう、自己啓発本に書いてあった。
教えてあげたい、しかし聞く耳を持たず、今日も悩み続けるのが弥勒菩薩。
きっとガンコに違いない。
そして、あんなに同じポーズをとり続けていて、大丈夫なのだろうか。
56億7000万年もあのポーズのままなんて……
絶対にエコノミー症候群になっているはずだ。
しかも半裸。
冬は寒そう。夏は直射日光を浴びて汗もかくだろうに、風呂には入らないのだろうか?
心配すぎる。
もう弥勒菩薩のことが気になって仕方ない!!!!!!!
日本一生徒数が多い社会科講師が日本史を笑いで斬ったら…
……となった貴方は、もう日本史にハマりはじめているに違いない。
そんな理系の方々へ、日本史のことを手軽に楽しく学べる本があるのでご紹介したい。
それが、古代から近代までの日本史面白ネタが100個読める『笑う日本史』だ。
著者の伊藤賀一先生は、あの有名な「スタディサプリ」の日本史講師。
日本一生徒数が多い社会科講師としても有名だ。
そして何を隠そう、私が東大文系を受験したときにはスタディサプリを使い倒した。
伊藤先生の日本史の動画授業を軽く数百時間は見ているだろう。
しかも、入試の成績では日本史でかなり高得点が取れたので満足だ(60点中44点)。
はっきり言って、伊藤先生のおかげで東大に合格できたといっても、過言ではない。
その伊藤先生が、満を持して世に出したのが『笑う日本史』である。
先生が、授業で「マクラ」として話している面白ネタが凝縮されているのが本書。
「戦い方がズルすぎる源義経」や、「じつは戦に弱かった織田信長」「最凶ダメ人間・石川啄木」など読めば、日本史に全然詳しくない人でも、一気に日本史通へランクアップ!
日本史マニアでも、裏話が満載で、楽しめること間違いなし!
ニヤニヤしながら至極の時間を楽しもう。
そして私のような、バリバリ理系の人でもこんなに楽しい(本来の楽しみ方と違う気がするけど)。
ということで、ここまで読んでくれて1009(センキュー)!
ハマり過ぎ注意。
【この記事を書いた人】
平井基之(ひらいもとゆき)
受験戦略家、東大に文理両方で合格した男。現役で東大理科一類に合格し、大手学習塾、私立高校などで東大をはじめとした難関大学の受験指導を経たのち、自らが受験生となり1年間で東大文科三類に合格。現在は東大受験者専門塾「敬天塾」の塾長として全科目を指導し多数の東大生を輩出している。著書に『ビジネスで差がつく論理アタマのつくり方――カンタンな中1数学だけでできる!』(ダイヤモンド社)、共著に『笑う数学』(KADOKAWA)、『理数アタマで読み解く日本史 ─なぜ「南京30万人」「慰安婦20万人」に騙されてしまうのか?』(ハート出版)がある。
ツイッター:@motoyukihirai