一人暮らし初心者はつまずくのが当たり前! カマタミワ×おづまりこ おひとりさま対談<後編>
更新日:2019/6/24
コミックエッセイ『ひとりぐらしこそ我が人生』、『おひとりさまのゆたかな年収200万生活②』で一人暮らしを謳歌している様子を綴る漫画家、カマタミワさんとおづまりこさん。得意分野も作風もまったく違う2人だけれど、お互いリスペクトし合っていることがわかった対談の前編。後編では、2人の一人暮らしを楽しむ“極意”と、そこに辿り着くまでの“紆余曲折”について聞いていきます。お互いの印象を描いたコラボ漫画も特別に掲載!
“豊かさ”ってきっと無理をしないこと
── 今は一人暮らしを思い切り楽しんでいるお2人ですが、辛かった時期もあったりしましたか?
おづ 美大生のときの一人暮らしは人としてダメでしたね。課題が忙しくてバイトもできないし、仕送りも全部画材に消えちゃうし。正直、極貧生活だったんです。当時は気付いてなかったんですが、自分をぜんぜん大切にできてなかった。だから今は、そのやり直しをしている感じですね。もうあんな悲しい暮らしはしたくない! ちょっとトラウマです(笑)。
カマタ 私もすごいわかります! 学生時代の一人暮らしはかなりトラウマ。ものすごい“汚部屋”だったし。今考えるとびっくりするようなことばっかりやってましたね。生活はいつもギリギリで。たぶん物心がついてなかったんだと思う(笑)。
おづ お互い最低レベルがすごかったみたいですね(笑)。
カマタ これ引かれると思うんですけど、昔洗濯物を溜め込みすぎて、“生命が宿った”ことがあったりします……。
おづ 私もあります……! 学生時代は京都に住んでたんですけど、湿気がすごくて。カレーとかちょっと置いとくだけで腐海になっちゃっうし。だから気をつけてたんですけど、うっかり冷蔵庫に入れ忘れた小麦粉に“生命が宿って”ました……。
── 最初はやっぱりつまずきますよね(笑)。そういう最低レベルも経験してきたからこそ思う“豊かな生活”の定義ってなんでしょう?
おづ 気持ちが穏やかで安定していることですかね。正直、寂しくて不安定になった時期もあったんですけど、今はやりたいことを仕事にできているし、ベストな状態だと思います。
── “生命が宿る”こともないし?
おづ それはある意味豊かかもしれないですけど(笑)。
カマタ いや、人間は腐海では行きられないから(笑)。
おづ やりたいことが出てくること自体、心が穏やかで生活を楽しめてるからだと思うんですよね。
カマタ 私もまったく同意です。自分の好きなことをめいっぱい楽しめるように、心と体に余裕があるのが“豊かさ”だなって思います。実は最近、お金ってそんなに重要じゃないのかもって考え始めたんです。一時期、めちゃくちゃ仕事が忙しくなったとき、収入は増えたけど何にも興味を持てないくらい心が乾いてしまって。たまに無理やり休みを作って、好きだったはずのことをやってみるんだけど、まったく何も感じなくなっちゃったんです。
おづ わかります。そういうときってご飯の味もしなくなる。
カマタ フリーランスって仕事が来なくなるのが恐怖すぎて、もう限界ってときも断れないんですよね。でも、土日も休まず寝る間も惜しんで働いてたら、お金は貯まったけど心身のバランスを崩してしまって。それってぜんぜん“豊かな生活”とはいえないですよね。
おづ 私もしばらくダブルワークを辞められなかったです。仕事が来るかどうかが本当に怖かった。それで昼は派遣社員を続けながら、夜にマンガを描いてたんですけど、私もやっぱり心身のバランスを崩しました。
カマタ でも、いざとなったらまた他の仕事を探せばいいんだし。そこまで無理しなくてもいいんですよね。
おづ そうなんですよね。やりたいことだけやって、もし仕事が来なくなったらそのときはそのときで考えようって思ったら、心に余裕ができました。
── 自分のなかで決めている“ボーダーライン”はありますか?
カマタ 私は限界を超えないと気づけないタイプだから、絶対に土日は休むって機械的に決めています。それでもちょっとはみ出しちゃうときもあるんですけどね。
おづ 私もやり始めるとスイッチが切れるまでやっちゃうほうで。だから最近は何事も70%くらいでいいかなって思うようにしてます。100%じゃなくても、70%くらいできてたら自分をほめてあげようって。
カマタ 自分で自分を追い詰めて、自分を嫌いになるのが一番よくないと思う。
おづ 本当にそのとおりです!
マクドナルドだって特別になる! 大切なのは“QOL”
── これまで酸いも甘いも噛み分けてきたお2人の“一人暮らしを楽しむ極意”を教えてください!
カマタ さっきの話とつながりますが、自分への期待値を上げすぎないことですね。できないことがあると自分を責めてしまうけど、それって自分を追い詰めるだけ。一人暮らしって誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めてあげるしかないんですよ。
おづ 私も毎日寝る前に、今日は本当に頑張ったなって自分をほめるようにしています。とりあえず外に出ただけでもえらかった! とか。
カマタ ていうか、自分で仕事して一人暮らしできてるだけでえらいですよね! 読者さんに相談されたりすると素直にそう思えるので、自分のこともそういうふうに考えたいです。
おづ 一人暮らしってどうしても寂しくなるときあるじゃないですか。でも、1人だからこそできることがあるなって思うようになってから、1人の時間が特別なものになりました。
── たとえばどんなことですか?
おづ バラード縛りで1人カラオケしたりとか。あと、ファストフードを食べる! 自炊するようになってから、マクドナルドとかむしろ特別なんですよね。「グラコロ食べてるー!」て(笑)。
カマタ グラコロ! ほぼ炭水化物しか入ってない食べ物(笑)。
おづ 罪悪感も手伝って、ものすごいテンション上がります(笑)。
── マクドナルドが特別ってコスパ最強ですね! この対談でお二人が一人暮らしを楽しんでいるのが改めてわかりましたが、もっと進化させたい部分はありますか?
カマタ 結婚願望がぜんぜんないので、一人暮らしっていうよりおひとりさま人生そのものって感じなんですが、もっと“QOL”を上げていきたい! 今ちょっと体調を崩しがちだから体をもっと強くするとか、いつか世界一周してみたいから英会話を習うとか。あと、行きつけのバーを見つたい! これから、おひとりさまの人ってどんどん増えてくると思うんです。だから、それを描くことで「こういう楽しみ方もあるんだよ」ってヒントになればうれしいなって。
おづ 私、もうすぐ進化する予定です! 6年住んだ部屋から引っ越すんですけど、初めてちゃんと内見をしました。これまでは、やむを得ない事情で引っ越すことばかりで、だから屋根と壁があればなんでもいいって感じだったんです(笑)。それが今回は、もっと“豊かな生活”にするためにあえて引っ越すから、ものすごい進化。しかも、これまでIHだったのが二口コンロになるんです!
カマタ 実は私ももうすぐ引っ越すんですけど、絶対二口コンロははずせないって思って選びました!
おづ 火が使えるってすごくないですか? 文明の進化ですよ(笑)。
カマタ いや、文明としてはIHのほうが進んでる(笑)
おづ たしかに(笑)。それで私も、そういう引っ越しの顛末とかも含めて、全部を描きたい。生活に漠然と不安を抱えてる人の助けになってくれればいいなって。はじめはつまずいたりもしたけど、年々楽しくなってきてるから、心配しなくていいよって伝えたいです。
カマタ わかります。若い世代の人と話すと、みんな年をとることを怖がってる気がして。でも、大人になるってすごく楽しいことだから。私たちの本で、希望を持ってくれる人が1人でも増えたらいいですね!
カマタさんとおづさんの対談を聞いていて、一人暮らしって素晴らしい! と改めて感じました。それでも、寂しくなったり不安になったりしたときは、2人の楽しそうな生活をちょっとのぞき見てみれば、きっと乗り越える力が湧いてくるはず。これからも、世のおひとりさまに、元気と希望を与えていってくださいね!
(取材・文/近藤世菜)