デキる同期や後輩に追い越され、焦りを感じる毎日……。職場で自分の居場所を見出すには?

ビジネス

公開日:2019/6/30

『先輩に可愛がられ、同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる』(関下昌代/中央公論新社)

 いつもと同じような時間に出社し、見慣れた職場で日々同じような業務をこなしていく。後輩も先輩も楽しそうに仕事をしているが、自分はどうもうまくいかない。正直、冴えない。なぜ彼女たちにできて、自分にはできないのだろう。職場にいながら、そのような劣等感にさいなまれた経験はないだろうか。上司に叱られた時や、同期や後輩がどんどん活躍していく姿を見た時「このままでいいのかな」と不安に感じてしまう。

『先輩に可愛がられ同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる』(関下昌代/中央公論新社)の著者も同様だった。

 ある日、職場で自分の居場所を見いだせず悩んでいた著者は、ふとため息を漏らす。

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「どこか異動できる部署ないかしら?」

 するとその場にいた人事部の女性が、

「人事の研修部門で人を探しているわよ」

と、繋いでくれたのだ。なぜ、タイミング良く、このようなチャンスを手に入れられたのか。そのことを著者は、こう記している。

「自分の心の声を口に出し、誰かに伝えた」ただこれだけのことが、新しい居場所を複数つくるきっかけになってきたように思います。

 言ってみれば本書は、部下、同僚、上司との、コミュニケーションの取り方を教えてくれる本だ。

 全方位、誰にでも慕われることは難しいかもしれない。しかし気遣いをして、関係を良くしようと頑張ってくれている相手を悪く思う人は少ないのではないか。本書には、リーダーシップ研修への参加後、急に部下とコミュニケーションを取ろうと頑張る上司の話が出てくる。研修で習ったコーチングを実践しているのだろうが、どうもうまくいかず部下からは不評だったようだ。だが「『上司らしいことをしよう!』として空回りする姿が、部下を和ませたのは事実です」とある。

 なんとも人間味溢れるエピソードである。こういう上司を「ダメ上司」と否定してバカにすることは簡単だ。だがそれでは自分の成長が止まる。部下のために頑張ってくれている上司と上手に付き合い、自分の能力を高めていったほうが得策だろう。

 個の集合体である組織の中でいかに自分を成長させ、まわりと協調していくか。本書にはその方法が、網羅的に記されている。

 人は一人では生きられない。ある意味、たくさんの人に迷惑を掛けながら、おたがい様で生きている。だからこそ、相手に感謝をもって接していかなければならない。そんなことを改めて気づかせてくれた本である。

文=夏野久万