なぜ日本の男子は草食化した?JKって何であんなに楽しそうなの? 統計という名の知的エンタメで日本の謎を解く!

社会

公開日:2019/6/29

『なぜ、男子は突然、草食化したのか 統計データが解き明かす日本の変化』(本川裕/日本経済新聞出版社)

「草食男子」という言葉は2006年に誕生し、08〜09年に流行語となった。それにしても、なぜ男子の草食化は進んだのだろうか? そしてそれはいつからなのだろうか? そういった日本社会の数あるミステリーを統計で読み解く1冊が『なぜ、男子は突然、草食化したのか 統計データが解き明かす日本の変化』(本川裕/日本経済新聞出版社)である。

 公益財団法人日本生産性本部は毎年新人研修で「働くことの意識」のアンケートを行っている。そこには「職場以外では、どんな時に一番生きがいを感じますか」という設問があり、著者はそこに目をつけた。その調査は1970年代から行われており、長期的な若者の意識変化を知ることができる。

「職場以外では、どんな時に一番生きがいを感じますか」という問いに対し、いつも同じ3つの回答がその割合のほとんどを占めている。最も多いのは「友達や仲間とつきあっているとき」で3〜4割。次は「スポーツや趣味に打ち込んでいるとき」が安定して3割台で続いている。3番目の「親しい異性といるとき」は、以前はほぼ2割で安定的に推移していたが、2000年ごろを境に急に低下傾向が顕著となり、最近では1割を下回っている。

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 著者はその「親しい異性といるとき」の回答が低下していることを「草食化」とみなした。そこでこの調査に相関する別の統計を著者が探ってみると、日本人のたんぱく質の摂取量の推移に行きついた。実は日本人のたんぱく質の摂取量は、その「草食化」と非常に似た動きをしていたのだ。これを突き詰めると、たんぱく質のなかでも「動物性」たんぱく質の摂取量が2000年前後を境に大きく減少しはじめたことわかった。

 実は、日本人のカロリー摂取量と「植物性」たんぱく質摂取量はもともと長期的に減少傾向にあった。そのなかでも「動物性」たんぱく質摂取量が大きく減少したことが影響し、新入社員の「草食化」とよく似た動きのグラフを作り出した。著者は、その食生活の変化と男子の草食化にはなにかしらの繋がりがあるのではないかとしている。

 ここで気をつけたいのは、2つの時系列データが並行して推移している場合、以下の3つの捉え方があるということだ。

(1)全く偶然の一致
(2)別の要因が両方に影響を与え、あたかも両者が関係あるように見える疑似相関
(3)どちらかが要因となって他方が動いているという因果関係

 著者も、たんぱく質と草食化の関係については追究が必要だとしている。

 本書ではこういった「日本社会のミステリー」を21項目取り上げている。「日本人が人助けしないのは本当か」「なぜ東日本より西日本のほうが出産・子育てに積極的なのか」「日本の女子高生が世界一楽しそうな理由」…などなど、気になるナゾが目白押しだ。

 本書で取り扱われるトピックには、人々の認識のズレや、固定観念の落とし穴を暴いたものもある。データを見つけること自体は簡単かもしれないが、それをどう読み解くかは受け手の「統計リテラシー」にかかっている。統計を賢く読み解く方法をぜひ本書で学んでほしい。

文=ジョセート