問題シーン続出! 話題の作品がついにアニメ化!『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
公開日:2019/7/5
過剰すぎる自意識ゆえに、ときに“イタさ”をともなってしまう言動。他者以上に、自分自身に振り回されて、コントロールのきかない思春期。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』などを通じ、少年少女の傷つきや葛藤を、繊細に、けれど容赦なく描いてきた脚本家・岡田麿里が原作をつとめる『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(通称:荒乙)がアニメ化! 性と恋のはざまで翻弄される高校生の群像劇、その魅力に迫る。
アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
監督:安藤真裕、塚田拓郎 脚本:岡田麿里 キャラクターデザイン:石井かおり アニメーション制作:Lay-duce
声優:河野ひより、安済知佳、麻倉もも、黒沢ともよ、上坂すみれ ほか
MBS/TBS/BS-TBS“アニメイズム”枠ほかにて、放送中
詳しくは http://araoto-anime.com/
「変わらないで」と、2巻で和紗が願う場面がある。
小さい頃から幼なじみの泉は大事な存在だった。けれどイケメンに成長した泉が、女子から「童貞もらっちゃおっかな」と狙われるようになり、地味な和紗は、今までどおり堂々と仲良くできなくなった。中身は昔とおんなじなのに、外側だけが“大人”になって、他人からの視線や“好き”の種類が気づけば変わってしまっていた。性が介在しただけで自分が自分じゃなくなっていく気がする――それは和紗にとって途方もない恐怖だが、「性にふりまわされたくない」と切に願う一方、彼女のなかには「えすいばつ」へのとめどない好奇心と憧れもまた存在する。その矛盾が彼女を、そして文芸部員の女子たちを、まさに荒ぶっているとしか言いようがない暴走に導き、さらなる混乱を招いていく。
文芸部員ゆえに知識は豊富。想像力もたくましい。けれど母親を含め、少なくとも子を持つ人はみんな経験済みという事実に打ちのめされるほど繊細で、理屈では制御できない感情が生まれると、対応するすべをまるでもたない。そんな彼女たちが愛らしくて仕方がないのは、岡田麿里が放つ言葉の力と、コミカルにも美しくも魅せる絵本奈央の作画があってこそ。ここに声が吹き込まれ彼女たちが生きはじめたら、どんな相乗効果を生むのだろうとアニメ化が楽しみで仕方がない。
現実の恋を知り、軽薄でいかがわしいだけだった「えすいばつ」を「全ての美しい気持ちが最終的に辿りつく場所」として認識し始めた和紗たち。自身と、そして周囲の変化をどのように受け止め、成長していくのか。五者五様の物語を見守りたい。
『荒乙』のココがイタくて愛おしい!
名場面の多い本作から、選りすぐりのシーンをセレクトして解説。あなたの気になるポイントはどれだ?
1.女だって“そういうこと”に興味はある
死ぬまでにしたいことはセックス――儚げな美少女・菅原氏の告白をきっかけに、性の興味を加速させる文芸部の少女たち。特に、イケメンに成長した幼なじみ・泉との関係が“男女”になってしまったことに戸惑う和紗は、「お母さんは処女じゃない」「泉はモテるから、しようと思えばいつでもできるんだ…」と、急に生々しくなった現実に気持ちが追いつかない。だけど文学表現としての性知識は豊富であるがゆえに、想像と妄想はどんどんふくらんでいく。「即物的な欲望にまみれた浅はかな愚者にはなりたくない!」という曾根崎部長主導で、「セックス=えすいばつ」と隠語を作成し、性を冷静に検証しようとする部員たち。果たしてその試行錯誤のゆくえは?
2.恋は、セックスと同じように浅はかなもの?
文芸部員のなかでも人一倍、性への拒絶反応が強い曾根崎部長は、下ネタで盛り上がるクラスメートに「汚らわしいのよ!! 性の獣がッ!!!」と叫んでしまうほど潔癖。だが「ブス」だの「うざい」だの言われるなかで唯一彼女を「かわいい」と言い続けてくれた天城くんのまっすぐさが、彼女のかたくなさを少しずつ溶かしていく。恋愛の延長線に、セックスがある。恋にはしゃぐのは、みっともなくて、はしたない。その思い込みや羞恥心を乗り越え天城くんと向き合うことで、自分とは違うと見下していたクラスメートたちへの認識も変えていくのだ。曾根崎部長だけでなく、部員全員が“性”を通じて、それぞれのやり方で他者とかかわっていく過程に要注目。
3.性の香りが、女同士の関係も変えていく
文芸部でいちばん“性の香り”を強くまとう菅原氏。彼女の爆弾発言をきっかけに部員全員が暴走していくわけだが、物事を常に俯瞰的に見つめていたはずの彼女も例外ではない。恋の相談に乗っているうちに、女友達の好きな人が気になりだして……というのはまさに思春期の“あるある”。泉を媒介に、和紗との関係が少しずつ不協和音を奏でだす。そんな菅原氏に触発され、性にも恋にもそれほど積極的でなかった百々子も、とある一線を越えてしまう。さらに顧問の山岸と“秘密の関係”を育む本郷先輩も、誰にも言えない苦しみと闘いのまっただなか……。何が起きても平穏に結託していた、女たちの花園・文芸部。制御のきかない感情の先にあるのは崩壊か、それとも。予測不能の展開に、今後も期待大である。
人物紹介
小野寺和紗
特徴がないことが特徴の「地味子」。幼なじみ・泉との関係に悩む。
須藤百々子
和紗の親友で、ほんわかしているが女子同士の友情に人一倍アツい。
曾根崎り香
性に奔放な人を「性的愚者」と呼ぶほど潔癖な文芸部部長。
本郷ひと葉
小説家志望だが、スランプ中。経験のためネットで男と出会うが……。
菅原新菜
謎めく美少女。「少女としての自分が死ぬ前にセックスしたい」と宣言。
『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(1~6巻)
岡田麿里:原作 絵本奈央:漫画
講談社週マガKC 429~440円(税別)
最新7巻7月9日(火)発売。
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