「それが人にモノを頼む態度か!」依頼のNG集と“お願い上手”になるテクニック
公開日:2019/7/2
人に何かを頼むのがどうにも苦手だ。こんなこと頼んだら悪いかな、と勝手に想像してしまってなかなか頼めない。自分で抱えても大した成果は出ないのはわかっているし、組織のことや仕事の完成度を考えれば、人に頼んだ方がいいに決まっている。わかってはいるんだけど…。
こうした悩みを持つのは自分だけではないようで、『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』(ハイディ・グラント:著、児島修:訳/徳間書店)という本が全米でも話題になった。確かに、この技術はぜひとも知りたい。本書には良い頼み方や悪い頼み方、なぜ頼めないのかという心理分析まで載っていて興味深い。
「人に頼む技術」というが、本来は「技術」など考えず素直に、困っているので手伝って欲しいと言えば済む話だろう。それが言えないこのこじれた心が憎いが、これはひとまず棚に上げておき、ここでは頼む際に相手との関係が悪くならない具体的な技術に注目してみよう。
■相手が気持ち良く頼まれごとを引き受けてくれる魔法の言葉
ずばり結論を一言で述べるなら、相手の自尊心を高める頼み方が得策だ。このお願い方法は、その相手にしか頼めない内容であり、相手が「私ってなんて親切で善い人間なんだろう」と自己評価を高める内容であるかのように伝えるのだ。今、その相手にしか頼めないと書いたが、実際にその人だけかどうかはこの際関係ない。嘘をついて頼めというわけではないが、あくまでも、依頼内容の表現の仕方だと思って欲しい。
例えば、「この書類には極秘内容が含まれているけれど、〇〇さんなら口が固いし信頼できるから、ぜひお願いしたいです」とか、「〇〇さんの仕事はいつも丁寧で正確だから、引き受けてくれると助かります。お願いできますか?」とか。
確かに、こんな風に言われたら、褒め言葉も入っているので、悪い気持ちにはならないだろう。
■人にものを頼む時のNGワードを公表!
さらに、頼む側が気をつけなければならない重要なことを明かしておこう。それは、頼んだ以上、相手がやってくれた内容について柔軟に受け入れるという心構えだ。つまり、相手は自分の分身ではない。自分の思い描いていた通り、100パーセントの理想に仕上がることはないのだ。こういった気持ちが前提にないと、結果に対して笑顔でお礼が言えない。
頼まれた相手にしても、せっかくやってあげたのに文句が返ってきたとなればたまらない。人間関係はギスギスして、場の雰囲気も暗くなるし、依頼をした側の第三者からの評価も下がってしまうだろう。
逆に、よくありがちだが意外にNG! という頼み方も挙げておこう。
それは、「頼んでいる仕事は、簡単で楽しいと強調する」ことだ。例えば、「色々な人と会話ができて楽しいからやってみてよ」とか、「誰でもできる簡単な仕事だからすぐ終わるよ」とかだ。要は、頼みごとを引き受けることのメリットを先に強調してはいけないということ。
これはなぜかというと、その仕事をどう感じるかは相手次第だからだ。頼む人にとっては簡単で楽しい仕事かもしれないが、頼まれた側はそうではない場合もある。相手は依頼者に自分の感情を支配されたように感じ、不快になってしまう。それに、頼まれた側が実際にやってみたら結構大変で、「簡単って言ったのに」と騙されたような気分になることもある。
このように、悪い頼み方と良い頼み方を知り活用することで、問題をひとりで抱え込むことはなるべく避けたい。仕事も生活の困りごとも、実は自分ひとりのものではなく、組織や地域全体、果ては世界に繋がる一部としてたまたま自分が触れているに過ぎないのだと思う。会社ならば、頼み頼まれることが容易にできる柔軟な組織ほど、人間関係は良く業績も上がりそうだ。社会にしたって、理想論かもしれないが、助け助けられるネットワークをたくさん張り巡らすことができれば、もっともっと生きやすいものになるはずだ。
文=奥みんす