「手に職」がなくても諦めるな! 「職業訓練校」で技術を身につけ「職人」になろう

マンガ

公開日:2019/7/5

『ぴっかり職業訓練中(1)』(野村宗弘/日本文芸社)

 世に「8050」問題というものがあって、これは「80代の親が50代の子を養う」構図を意味する。養われている50代の子どもは当然、無職である場合が多い。働く気がないのは論外だが、働く気があっても年齢やスキルの問題から受け入れ先がないこともあるだろう。だが、諦める必要はない。日本には「職業訓練校」(通称「ポリテク」)が存在し、そこでさまざまな技術を身につけることができるのだ。『ぴっかり職業訓練中(1)』(野村宗弘/日本文芸社)は、職業訓練校に通う生徒たちを描いたコミックである。

 主人公の「吉島よしお(28歳)」は漫画家を目指していたが挫折し、リスタートのため「ポリテク」で溶接を学ぶことに。ポリテクでは授業料は無料(有料コースもあり)で、条件によっては「職業訓練受講給付金」が支給されることもある。ポリテクに通う目的は当然「就職」であり、生徒は皆「失業中」。生徒たちの年齢や過去の職業も十人十色で、それぞれがそれぞれの事情を抱えて授業を受けているのだ。

 本書に登場する「西川先生(65歳)」は元造船の熟練工で、いわく「職人は誰でもなれる」という。「職人」というとハードルが高く感じられる向きもあるかもしれないが、「食べていくくらいの腕ならいつか身につく」のだ。もちろんそこから先は本人の修練次第だが、まずはやってみるというのが西川先生の教えなのである。

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 ところで、ポリテクにはさまざまな年齢の人が通うと先述したが、具体的にはどのくらいなのか。左官志望の「ひな子ちゃん」は21歳、主人公と同じ溶接科で元魚屋の「平目さん」は50歳、元溶接工で定年退職した「山本さん」は63歳と、年齢は幅広い。「60歳で定年じゃったら、年金貰えるまでどうすりゃええんや」と山本さんがいうように、老後の不安は常に存在する。ましてや例の「老後2000万円問題」が報道されてからは、その不安を強く持った人は多いだろう。ポリテクは、そういった老後問題解決の一助となる可能性も秘めているかもしれない。

 とはいえ、ポリテクに通うということに「抵抗」のある向きも存在しよう。本書ではサラリーマンだった「青竹さん(42歳)」がそのタイプ。職を失したことを、あたかも敗北者のように考え、さらにプライドが邪魔して皆に溶け込むこともできない。しかし現在は終身雇用の時代でもなく、失職は普通に起こりうる。もしプライドからポリテクに通うのをためらっている人がいるなら、いっそ開き直って考え方を変えてみれば、新しい道が開けるのではないだろうか。

 このまま少子高齢化が進めば、労働人口は確実に減少する。そして老後の生活不安も重なるならば、結局は高齢者も含めた労働力の確保が必須となろう。「8050」問題でいう50代の子どもも、働く意思さえあればポリテクは受け入れてくれる。まあ日本の将来、なんてことはともかく、まずは自分の将来の安定のために、しっかりと「手に職」を付けておくことは決してムダにならないはずだ。

文=木谷誠