「就活がイヤ!」という学生に悪魔主義者はどう答える? やさしい悪魔による神対応の人生相談
公開日:2019/7/7

人間、生きていれば悩みの1つや2つあるだろう。だからといって、誰にでも気軽に相談できるわけでもない。そんな人におすすめしたいのが、『高橋ヨシキのサタニック人生相談』(高橋ヨシキ/スモール出版)だ。本書は、著者がメールマガジンで展開してきた「クレイジー質問コーナー」から選りすぐったさまざまな人生相談に対して、“サタニスト”であるという著者が懇切丁寧に答えているものだ。
「サタン(悪魔)」や「サタニスト(悪魔主義者)」という文字を見ると、悪魔に魂を売り渡したり、子どもや動物を生贄にしたりする怪しい悪魔崇拝を思い浮かべる人もいるかもしれない。本書によると、“サタニズム”とは徹底した個人主義のことであり、サタニストにとってサタンとは、「鏡に映る自分自身のこと」でもあるという。つまり、本書はサタニストであると語る著者が、そのサタニスト的な視点で人生相談に対して答えていくというものである。黒魔術のやり方や、嫌いな奴を呪い殺す方法といったオカルト的なマニュアルではないので、ご安心いただきたい。
■「就活がイヤ」という学生に、悪魔主義者はどう答える?
本書には「家庭・仕事編」「恋愛・人間関係編」「生活・健康編」といった日々の生活に密着した悩みから、映画ライターである著者らしい「映画鑑賞編」、そして「生と死編」といったオカルトやスピリチュアルにもつながりそうな悩みまで掲載されている。「名前も知らない女性に一目惚れしました」というキュンキュン系の相談から、「事故物件ってどう思いますか?」という一瞬ドキリとさせられる相談まで、40を超える相談案件に対して、それぞれ誠実に向き合い回答しているのが特徴だ。


たとえば、「就活がイヤでたまりません」という大学生には、「就職しなくても生きていく方法はいくらでもあります」と、ズバッと回答する。社員として就職せずバイトや非正規雇用者として生活の糧を得ることもできるが、そこには危うさもあることを指摘した上で、日本の会社にはムラ社会特有の「内部でしか通用しないプロトコル」を非常に重視する傾向があることを指摘する。そして、「『内輪のプロトコル』というものを強く意識することで、では『外でも、あるいはどこでも通用するプロトコル=コミュニケーションの方法とは何か?』ということを考えることが重要です」と、相談者が抱えていた就職に関する疑問に対して正面から真摯に向かい合う。その姿は、悪魔どころか“神対応”の回答だ。
■「父親になる不安」は、映画を見ながら解決できる…!?
「自分が父親になることに不安を感じています」という新米パパへの悩みに対しては、「『なーに、石器時代からみんなやってきたことだから、自分にできないわけがないじゃんか』と自信をもっていいでしょう」と、ユーモア混じりで相談者を勇気づける。さらに、映画ライターとして、“子育てに悩む人におすすめの映画”を10本以上挙げて子育てを応援するのも、著者ならではの魅力だろう。
正直な感想では、サタニックなものの見方というよりも著者のやさしさや真剣さがあふれる本書。悩みや疑問に対して丁寧に答える様は、子ども電話相談室の“サタニスト・バージョン”といえるかもしれない。くり返しになるが、サタニストにとって「サタン」とは鏡に映る自分自身のこと。本書で紹介されている数々の悩み解決を読み終えスッキリとしたあとには、思わず「サタン万歳!」と叫びたくなるような1冊だ。
文=富田チヤコ