ちょっと仕事中毒な20代OLが異世界に召喚!? 忙しい女性を応援する恋愛ファンタジー
更新日:2019/7/7
女性が活躍する社会を目指す現代だが、仕事で努力してもなかなか認められないことも多い。セクハラやパワハラにさらされ、人間関係で悩みを抱え、体調を崩しても誰にも頼れない。とかく、働く女性には苦労が多い。
『聖女の魔力は万能です』(藤小豆:著、橘由華:原作/KADOKAWA)は、現代の働く女性が異世界で活躍する恋愛ファンタジーだ。原作小説は第1~4巻までが好評発売中。本稿で紹介するコミック版は2019年7月5日に第3巻が発売されたばかりの話題作だ。
主人公の小鳥遊聖(セイ)は、ちょっと仕事中毒な20代のOL。どこにでもいる平凡な彼女が、異世界のスランタニア王国に「聖女」として召喚される。ところが儀式によって召喚されたのは、セイと御園愛良という女子高生の2人。どちらが本物の聖女なのかはわからない。しかし、儀式に現れた第一王子は思い込みから若くて美少女の愛良を「聖女」として歓迎し、セイを放置してしまう。勝手に呼ばれた挙げ句、勝手に見放されて立つ瀬のないセイの面目躍如の巻き返しが本作の見どころだ。
暇を持て余したセイは気晴らしに薬用植物研究所で働き始める。所長や先輩とも打ち解け、ハーブ園を世話しながらポーション作りに精を出す。仕事漬けの日々から解放され、のんびりとした生活にも馴染み始める。そんな折、騎士団が魔物に襲撃される事件が起こる。セイの作ったポーションで九死に一生を得た騎士団長アルベルト・ホークから好意を寄せられるようになり、セイも彼の紳士的な人柄に次第に惹かれていく。
降って湧いた運命の出会いに戸惑いながらも、街でデートをしたり、プレゼントを贈り合ったりと、恋愛下手な喪女のセイが手探りながらも一生懸命に交際を進めていく姿がなんとも初々しく、甘いラブロマンスが胸をときめかせる。
ポーション作りだけでなく、異世界にない料理やお菓子のレシピを提供したり、覚えたばかりの魔法でマジックアイテムを作り出したり、回復魔法で傷ついた人を癒やしたりと、自分にできることで周囲に貢献しようと努力や勉強を欠かさないのがセイの美徳といえるだろう。
与えられた役目や肩書きではなく、あくまでも本人の行動と実績によって認められる。自立した働く女性のシンデレラストーリーとなっている点が、女性ファンに支持されるポイントだろう。
小説版は1人称視点での心理描写が厚く、一方でコミック版はテンポも速く読みやすい印象を受ける。なによりもキャラクターのビジュアルがいい! 原作でも登場人物はみんな美形に描かれているのだが、より豊かな表情を見せ、息づかいや鼓動が伝わる躍動感は、やはり漫画の演出ならではだ。
仕事も恋愛も捨てたくない。どちらも大切に考える現代の働く女性たちにぜひ読んでほしい1冊だ。
文=愛咲優詩