わが子を“芸術家”だと確信した作家が教えてくれる「できが悪い子ほど、かわいい」の法則
更新日:2019/7/10
「できが悪い子ほど、かわいい」という。親バカな言葉なのかもしれない。わが子は、できが良くても悪くても、結局はかわいいのだ。できが悪い子なら、親はできが悪い子だからこその認め方、褒め方をしてやりたい。
『できないもん勝ちの法則 その調子でいつまでもおバカでいてくれよ』(ひすいこたろう/扶桑社)は、作家・ひすいこたろう氏と息子・ユータロー君の、ほっこりさせるやり取りを一話完結で描く1冊。「できが悪い子ほど、かわいいの法則」が見えてくる。
ユータロー君が、どれくらいできない子なのか。例えば、宿題のノートにはこう書いてあった。「3+3=7」。ひすい氏がこの解を見たとき、あぁ足し算の概念を根本からわかっていないな、と思いつつ、「算数、ぜんぜんわからないだろう?」と聞くと、ユータロー君は「大丈夫」と答える。
「オレ、テストのときは後ろの答えを見てるから大丈夫」
カンニングをするなら横の子の解答を見る方が一般的(?)だ。ひすい氏は、岡本太郎氏の「道がふたつになったときに、あえてあきらかに損だという道を選ぶのが芸術家だ」という言葉を思い出し、ユータロー君が芸術家だったんだな、と納得する。
また、突如「とおちゃん、オレ、わかった!」と言いだすので、ひすい氏が耳を傾けると「テストで、時計回りか、反時計回りか聞かれた場合は、反時計回りと答えるとまず正解!」との発想を披露。ユータロー君の天性が見えてくる。
さて、そんな発想の天才・ユータロー君。お菓子を食べて、口の周りを砂糖だらけにして母親から叱られると、「これは非常食だ!」と返す。ひすい氏は、なるほど口までの距離わずか1cm、世界で一番近い非常食か、と感心する。子どもは、ケチャップをどうしたって服に付ける不思議な生き物だが、ひすい氏は、ケチャップを「紅葉」として見れば世界が楽しくなるな、と納得する。
と、まあこれは屁理屈のようにも見える回答だが、大人が本当に納得してしまう発想もある。ユータロー君は、くじ引きの必勝法を編み出した。
ある祭りの日、ユータロー君はサイコロを振り、1度の挑戦でゾロ目を3回連続で出した。確率にすると約0.4%。200回繰り返しても1度も起きないようなことを、1度で起こす奇跡の方法を、ひすい氏はこっそり聞いてみた。ユータロー君によると、手順がある。
(1)まず、目を閉じて心を静かにさせる
(2)ピカーンと光る
(3)その瞬間「当たりませんように」と願いながら
(4)サイコロを投げる
ひすい氏は、精神集中は理解できるが、なぜ「当たりませんように」と願うかがわからない。理由を尋ねてみても、ユータロー君本人にもわからない。あとでひすい氏があれこれ考えてみて、「欲を消す」という理由が浮かんだ。
ひすい氏はできが悪い子を見ると、自身の子どもの頃を思い出し、誰もが子ども出身だったことまで思いを馳せることができるようだ。わが子のできなさに悩んでいる人は本書を読み、あらためてわが子の素晴らしさを再発見してほしい。
文=ルートつつみ