生きるモチベーション(メンタル管理と自殺予防)/『健康の結論』⑤

健康・美容

公開日:2019/7/23

「人生100年時代」といわれる今、「生き続けるためには“防げる死を防ぐ”ことが重要」と堀江貴文氏。堀江氏が専門医師たちに徹底取材してまとめた著書『健康の結論』の中から、もっとも防ぎたい死、「自殺」について解説した章を5回連載で紹介します。

『健康の結論』(著:堀江貴文、監修:予防医療普及協会/KADOKAWA)

「死にたい」と言われたら、どうすればいいのか

 もしも「死にたい」と言われたら、次のことに気をつけて話を聞いてみてほしい。そして、相談を受けた自分と相談者本人が信頼できる第三者を見つけ、支援者につなげていくことだ。

 自殺未遂をした人のうち「本気で死にたいと思っても相談しなかった」という人は、実に73.9%だという(日本財団自殺意識調査 2016)。自殺者の多くは一人きりで悩み、問題を客観的に把握し、助けを求める力がかなり低下している。

 自殺を考えるほど追い詰められている人に、「なぜ今まで黙っていたのか」と問題を問い詰めることは無意味だ。まずは、ただ黙って聞くことで問題をあぶり出すことが必要である。重々しく捉えなくてもいいが、「愚痴を聞こうか」くらいの構えでいいので、できれば最初はちょっとだけ我慢をしても、話だけは聞くということができたらいい。

【死にたいと言われたら】
・あれこれ口を挟まずじっくり聞く。
・道徳的な考えの押し付けやダメ出し、具体的な解決策はひとまず置いておく。
・興味本位で根掘り葉掘り質問しない。話したくないことは黙っていてもいいという態度で。
・簡単に「任せておけ」とは言わない。
・相談先を一緒に考えてみる。他に信頼できる人や専門の機関はどこかを考える。
・「誰にも言わない」という約束はしない。言いふらすことと相談は違う。
・「話してくれてありがとう」と言う。相手が相談するのは良いことだと思えるように。
・過度に共感しなくてもいい。
・自分も第三者に相談する。

「第三者」は友人や知人でもいいが、「プロの支援者」のいる機関をおすすめしたい。地域の保健センターや保健所、精神保健福祉センター、医療機関などが挙げられる。

 大人である相談者を、友人や知人はともかく病院などの専門の機関につなぐのは、かなりハードルが高いと思われるかもしれない。もしも事態が深刻であるにもかかわらず相手に「秘密にしてくれ」とか「大げさだ」などと拒まれたら、「(相談を受けたことを)自分がどうすればいいか相談してみたいから」と伝えて、まずは自分が連絡を取ってみるのも一つの手だ。

 繰り返しになるが、他者を介入させることに罪悪感を感じる必要はない。ずっと辛い気持ちを抱え込んできた人が「心を許せる相手」はそう多くはないため、共感してくれた人には頼りきってしまいがちだ。頼られると、真面目な人ほど「自分しか救える人はいない」などと考えるだろう。しかし、そういうヒロイックな思い込みには注意が必要だ。「ワンオペ対応」は共倒れを招きやすく、結果的にその人を救えないこともあるのだ。

 僕はかつて刑務所にいた。刑務所は決して逃げられない牢獄だ。けれども、一般社会は牢獄ではない。会社からも家族などからも、望めばいつでも逃げられる環境だ。物理的には逃げられるにもかかわらず、自分自身で架空の刑務所を作ってしまい、そこから出られなくなるように感じている──問題が複雑に絡み合い、自殺を考える状況に陥っている人は、まさにそんなイメージなのではないだろうか。

 その人自身が作っている牢獄は他人には見えないし、こじ開けることは難しい。でも、もしそういう状況にいる人を見つけたら、話を聞いて「ここは刑務所じゃないし」と教えてあげ、できるだけ多くの仲間や支援者につなげていってほしい。

僕の結論

□「死にたい人」は、「ほんの少しでも辛さがやわらげば生きたい人」である。

□自殺を試みる人の9割はメンタル不調。その人にとって解決しがたい問題を抱えている。

□日本では10代のおよそ10人に1人は自傷の経験がある。身近に悩みを抱えた人がいるかもしれない。

□死にたいと言われたら、ワンオペではなく、チームで支えよう。

□一般社会は牢獄ではない。自分で自分を檻に閉じ込めないこと。

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●著者
堀江貴文
1972年、福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。現在は宇宙ロケット開発や、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースを手掛けるなど幅広く活動を展開。2010年に創刊した有料メールマガジンは1万数千人の読者を持つ。2014年にスタートしたコミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」の会員数は約1600人にのぼり、常時新たなプロジェクトが生まれている。2015年より予防医療普及のための取り組みを開始し、2016年3月には「予防医療普及協会」の発起人となる。
ホリエモンドットコム:https://horiemon.com

●監修
予防医療普及協会
2016年3月、堀江貴文や経営者、医師、クリエイター、社会起業家などの有志を中心として発足。同年9月、一般社団法人を設立。予防医療に関する正しい知見を集め、啓発や病気予防のためのアクションをさまざまな企業や団体と連携し、推進している。
HP:https://yobolife.jp