大好きな「推し」にプロポーズされたら…!? ファンとしての一線を守りたい女子VSちょっとおバカなイケメン俳優の胸キュンラブコメ

マンガ

公開日:2019/7/18

『推しが我が家にやってきた!』(慎本真/フレックスコミックス)

 大好きな「推し」が突然目の前に現れてプロポーズをしてきたら――!? 慎本真氏のマンガ『推しが我が家にやってきた!』(フレックスコミックス)は、ファンなら一度は妄想するであろう、そんな夢のようなシチュエーションから始まるマンガだ。

 主人公は、小山田すみれ・大学生。今や人気ナンバー1の若手実力派俳優・佐久間葵こと通称“さっきゅん”の10年来の大ファンだ。部屋にはグッズが山ほどあり、週に一度は手紙を書く。日に日に有名になる彼を少し寂しいと思いつつも、全力で応援し続けている。

 そんなある日、さっきゅんが突然、すみれの家に指輪を持って訪ねてくる。なんでも彼は、まだ芸能界入りもしていない時に、すみれから届いた人生初のファンレターがとてもうれしく、今日まで頑張ってこれたのだと語る。すみれが成人したら迎えに行こうと、彼女も作らず仕事に邁進…! そして、すみれが晴れて20歳になった翌日、さっそく家を訪れ「オレと結婚を前提にお付き合いしてください!」とプロポーズしたわけなのだ――。

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 いつも画面越しに見つめていた彼が自分だけの王子様に…! もし本当にこんな事態が起こったら、筆者なら狂喜乱舞である。人生は有限だ。それがたとえ短い期間で、早々に振られる可能性大でも、全力で謳歌すると思うのだが、これまで真面目にファンをやってきたすみれは違った。さっきゅんがプロポーズ後に発した「ファンは辞めて彼女になって」「もし君が望むなら芸能界辞めたっていい」という言葉に激怒したのだ。そうして、「引退」発言はファンにとって「熱愛」以上に恐ろしいこと、この10年ファンでいて、万年金欠で、彼氏にも振られ、良いことばかりではなかったけど、テレビや雑誌で頑張るあなたを見るたびに力がわいたことを涙ながらに伝えたのである。

 すみれに怒られたことで、さっきゅんは、「オレが間違ってたよ」と認め、ファンの人たちのことを大切にすると約束する。しかし、何をどう勘違いしたのか、少々おバカな彼は、次は「入籍の日はいつにする」と言いはじめ、すぐにでもお嫁さんになることを勧めてくる。

 以後、すみれの元へ婚姻届を持って訪れたり、不意打ちでキスをして、「プライベートでキスすんの初めて」と告げてきたり、胸キュンな行動を起こし続けるさっきゅん。この世の何よりも尊い「推し」の熱い思いはうれしいが、ファンとしての一線を守りたい複雑な心境のすみれ。少々厄介なこの恋は、一体どんな結末を迎えるのかが楽しみである。

 また本書は、公式の供給に財力が追いつかず、バイトをしても「常に金欠」なすみれの様子や、二次元オタの友人との相容れない不毛な討論など、「推し」に時間もお金も捧げてきたファンの姿も、とてもリアルに描かれているのも興味深い。すみれと同じように、大好きな「推し」に愛を送り続けてきた人はもちろん、キラキラしたイケメンが大好きな人、胸キュンしたい人など、多くの人に読んでもらいたい最高のラブコメである。

文=さゆ