PTAって本当に不要? 逆転の発想でPTA改革を成功させた「T」の活用
公開日:2019/7/21
不要論が叫ばれるPTA。7月に入って活動が波に乗り始める中、賛否両論はあっても「なってしまったからには」と前向きでも後ろ向きでも頑張っているPTA役員や委員は、不要論に複雑な感情を抱いているかもしれない。
多忙な活動と、単年か数年で入れ替わる構造上、組織が硬直化しているPTAは少なくない。「変えたい」と思っていても、活動は「例年どおり」で、変革は難しい。おそらくそんな多くのPTA役員や委員の気持ちに共感しながら、無理のない変革に舵を切る方法を示す1冊が『PTAのトリセツ〜保護者と校長の奮闘記〜』(今関明子、福本靖/世論社)だ。
著者は、頼まれたから仕方なく役員を受けただけなのに、PTA会員から委員抽選の批判を受けるやるせなさを感じながらも、PTAを「嫌われ者のピーマン」的存在から「みんなで奪い合う甘い美味しいイチゴ」的存在に変えるべく、変革に動き出す。
まず行ったのは、学校の賛同を得ること。教頭先生から全面バックアップの言葉が飛び出し、保護者アンケートを実施する。
「あなたがPTA役員に選出されたとして必要だと思う活動に「◯」を、どちらでもよいものに「△」を、必要だと感じないものに「×」を付けてください」
ほとんどの役員や委員は“やりたがり”ではなく、一般のPTA会員と同じく“フツーの人”だ。保護者の意見が、変革の後押しになる。
本書の場合は、アンケートの結果、「研修会の企画運営」「PTA協議会から依頼される講演会の動員」「広報紙作成」などに、半分以上の人の「×」が集まり、徐々に手を入れていくことになる。
敢えて引き継ぎ書を作らないのも、画期的な考え方だ。特に単年でメンバーが変わる場合、引き継ぎ書はなくてはならないものという捉え方が強い。しかし、本書は「前例踏襲」こそが硬直化の原因とし、学校行事の手伝い以外は「活動は決まっていない」「やりたいことはそのときのメンバーで決める」という願いを込めて、引き継ぎ書は作成していない。
本書は、家庭が孤立しがちな今の時代だからこそ、PTAが「選ぶことの出来ない公立学校に通わせる者同士が助け合い、励まし合える仲間」「いろいろ教えてくれる先輩」などと出会える場であるべきだと述べる。
本書は、中ほどで「PTAをよくするために必要なこと」として8の項目を挙げているのだが、最も大切なことを8番目の「校長先生のリーダーシップ、問題意識の高さ」だとしている。
PTAを変えようとすると、どうしても自分たちだけ(PTAの「P=Parent」)で動こうとしがちだ。しかし、PTAの「T=Teacher」としっかりと協同することで、変革はグッと楽になるのだと、本書は明かしている。
文=ルートつつみ