解くだけでIQアップ? 高IQ者が考えた大人のためのパズルでアタマのよさが分かる
公開日:2019/7/31
『高IQ者が考えた 解くだけで頭がよくなるパズル』(関口智宏/集英社)という題名を見て、どのように感じるでしょうか。その名の通り、パズルがたくさん載っている本です。しかも、著者の関口智宏氏は、IQ148以上の人限定の団体「MENSA(メンサ)」の会員。MENSAは人口の2%の人だけが入会できる世界的な組織です。
ところで、あなたは「頭のいい人」とはどのような人だと思いますか? 高学歴の人? 外資系企業でバリバリ働くビジネスパーソン? はたまた医師や弁護士のような国家資格を持っている人のことでしょうか?
確かに彼らは頭がいいといえるでしょう。しかし、記憶力のある人なら学歴や資格を手に入れることは難しくありませんが、実社会では記憶のみに頼るには限界があります。とっさの機転で周りに突っ込ませるようなボケをかませるお笑い芸人や、アスリートのように、記憶力以外の能力で大活躍している人はたくさんいます。
私たち日本人は物心ついたときから知識を求められる場面に半ば強制的に投げ込まれています。記憶力に大きなウェイトが置かれる社会に対して疑問を投げかけているのが本書です。
なぜ記憶力に頼ることに問題があるのでしょうか。それは情報端末の発達によって、「ググる」だけで答えがすぐ分かる状況になっているからです。つまり「知っている」ことの価値が低下しているということ。代わりに重要性を増しているのが、情報や経験を基に分析したり考えたりする力なのです。
本書の冒頭には、読者が今どのような頭の使い方をしているかのチェックがあります。脳の分類は「記憶脳」「分析脳」「思考脳」。私自身はそのチェックでは特に偏りはなかったものの、実際に問題を解いてみるとどうやら「思考脳タイプ」であることが分かりました。思考力の問題はそれほど難しく感じなかった一方で、分析力の問題は解くのに時間がかかりました。
個人的に興味深いと感じたのは、パズルとパズルの間に挿入されているコラムです。「IQが高いと人間関係に苦労する?」「高IQは就職に有利?」「高IQは理系が多い?」あたりは、気になるタイトルかもしれません。結論からいえば、高IQであることが必ずしも社会生活で有利に働くことはないようです。高IQ者は飲み込みが早い反面、飽きっぽいのが特徴。大学卒業後の3年間で5社の勤務を経験している著者の関口氏のような人も少なくないとか。
実際にMENSAメンバーの学歴や職業もさまざまであることからも、IQが高いからといってすべての面で優秀とは限らず、IQの高さと社会的な成功に相関関係はないことが分かります。出力のパターンは人それぞれですが、彼らはIQに限らず総じて脳の処理能力が高いことが共通しているそうです。
高IQかどうかにかかわらず、私たちが覚えておきたいのは「ハマる分野があれば才能を発揮できる」ということ。自分で自分の可能性を制限することのないように、親ならば子どもの将来を勝手に決めてしまわないことです。
著者は頭のクセは本との付き合い方で矯正できるといいます。自分の知っていること、興味のあること以外のことも意識して接するようにしてみる。記憶脳に頼るクセをなくせば、予備知識のない分野でも自分で楽しさを見つけ出すことができます。
さて、「解くだけで頭がよくなるパズル」をうたっている本書。IQアップを期待して本書を手に取る読者は多いかもしれません。ところが、残念ながらIQはトレーニングで向上させることはできないそうです。著者も言っているように「パズルを解いたくらいで頭がよくなれば苦労はない」でしょう。それでは、本書を読むメリットはどこにあるのでしょうか。ぜひ自分で確かめてみてください。
文=いづつえり