“日本でいちばんの王子さま” 祝・ご結婚「王子さまが選ぶひと」/林真理子『女の偏差値』①
更新日:2019/8/9
言わずと知れた日本女性のお手本、林真理子さんの「美女入門」Part17。アンアンでの連載もついに20周年! 昭和・平成・令和…いつの時代も最先端。現状に満足せず上を目指して努力を続ける。それが美女の、生きる道!
王子さまが選ぶひと
今どき「白馬に乗った王子さま」なんていう言葉自体、死語になっている。
しかし本当にいるんですよね。イギリスのハリー王子。私は頭の薄いお兄ちゃんよりも、ワイルドな彼の方をずっと支持していた。そして彼がとっかえひっかえ、いろんな女性と浮名を流しても、
「ハリーだったら仕方ないわ」
と許していた(エラそうだな)。
そうしたら、今度婚約というではないか。相手はアメリカの女優。ドラマ「スーツ」は、時々私も見ていた。今はそうでもないらしいが、アメリカはちょっと前まで、テレビに出ている俳優は映画に出ている俳優よりも一ランク下という風潮があった。だから私も最初、
「テレビドラマに出ている女優か。こんなにキレイでも映画に出られないんだ」
という意識で見ていた。それが今度プリンセスだという。メーガン・マークルさんについては、イギリス国民はみんなが大賛成というわけではないようだ。なぜならバツイチでアメリカ人である。イギリス人は、アメリカ女性について、苦い思い出があるのだ。
今のエリザベス女王は、本来ならば王位につかなかった。しかし伯父さんにあたるエドワード八世が、アメリカ人女性のシンプソン夫人と恋におち、退位してしまったのだ。この人はバツイチどころか、バツ2だったので、八十年前のイギリス世論は許さなかったということらしい。
今回のメーガンさんについては、バツイチ以外にも、お母さんがアフリカ系だとかいろいろ言われているらしい。が、私から見ると、アフリカンが混ざったために、彼女はものすごくエキゾチックな美貌となった。青い目、ブロンドの女優なんかよりずっと魅力的。ハリー王子がひと目惚れするのも無理はないかも。
しかし、とさらに思う。バツイチ、外国人というハンディがあるなら、日本人の女性が王子さまを射止める可能性だってあったはずだ。
どうして世界的玉の輿は、デヴィ夫人でストップしてしまったんだろう。
こうなったら日本の「王子さま」に目を向けるしかない。本物の皇室の王子さまは、あまりにもお小さいので、他の世界の人を探してみる。そうなると、やっぱり今、日本でいちばんの王子さまは、小泉進次郎さんでしょう。
私も何度かお目にかかったことがあるが、本物の方がずっと素敵。頭はいいし、ハンサムだし、そして人に対する気遣いがある。この方のお嫁さんになれたらどんなにいいだろうかと、多くの女性が思っているはずであるが、本人はまだ結婚する気はないようだ。しかし、もし結婚が決まったら、どんな騒ぎになるか目に見えている。おそらく、美貌、性格、頭脳、すべてに満点の女性だろうな。
ここで王子さまの定義をすると、その本人がものすごい魅力とオーラを持ち、すべての女性の憧れの的になること。そしてもう一つは「家」を背負っていること。結婚したとたん、王妃として、なんかステータスのある地位と義務が生じるということがあげられよう。
少し前まで、海老さまがこの王子さまだったかも。やんちゃなところも、いかにもそれっぽかった。しかし、
「大富豪の令嬢しかなれない」
と思われていた王妃の座であったが、彼は美しく賢いキャスターの女性にひと目惚れした。そう、おとぎ話と同じように、王子さまはファースト・インスピレーションで相手を選ぶのである。麻央ちゃんのことは本当に残念であったが、彼女は素晴らしい女性で、これからも伝説として生きていくに違いない。
そしてさらに昔、王子さまがいた。今の貴乃花親方。そう、渦中のあの方である。
貴乃花親方というと、
「えー、あのオールバックの、ちょっとこわそうな、こじれ系のおじさんね」
という人もいるであろうが、現役の時の人気のすごさといったら……。このアンアンで特集が組まれたのだ。篠山紀信先生が写真を撮り、この私が文章を載せた。
「貴花田に、どうしてみんなが夢中になるか」
というやつ。
りりしくて、強くて、やさしくて、本当にみんなが彼に恋焦がれた。ちょっとあれだけ日本中が熱狂したお相撲さんはいなかったと思う。
その彼は、やはり二十歳をちょっと過ぎた時、テレビ番組で宮沢りえちゃんと出会った。そしてここでもひと目惚れ。二人の記者会見を私も見に行った。ホテルでカンヅメになって原稿を書いている最中、そこの宴会場で記者会見が行われることを知ったのだ。出版社に頼み、腕章をもらってさっそく潜入した。初々しい二人のかわいかったこと。しかし破局が訪れる。
一人になった王子貴乃花に、やがてぐっと年上のおねえさまが現れる。フジテレビの人気アナウンサー。実は王子は常に孤独なんだ。そのことを知っている女性は強いと本当に思う。そして王妃になるのである。
1954年山梨県生まれ。コピーライターを経て作家活動を始め、82年『ルンルンを買っておうちに帰ろう』がベストセラーに。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第九四回直木賞受賞、95年『白蓮れんれん』で第八回柴田錬三郎賞、98年『みんなの秘密』で第三二回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。2018年、紫綬褒章受章