息苦しい親子関係はブラック企業と同じ!? 束縛、攻撃…一緒にいるとしんどい親子のトリセツ

暮らし

公開日:2019/8/16

『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(石原加受子/あさ出版)

「親子での何気ない会話が言い合いに発展してしまう」
「親子でいると互いにイライラしてしまう」
そう感じたことがある人は少なくないだろう。そんな親子関係の心理について、心理カウンセラーの著者がメスを入れるのが、『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(石原加受子/あさ出版)だ。

 本書では「なぜ“苦しい親子関係”が生まれるのか?」という疑問を出発点に、自分の「言動パターン」を変えることによって親子関係を改善していく方法が具体的に示されている。

■親子一緒にいるとイライラしてしまう原因は?

 親子が互いを責めてギクシャクしてしまうのは、相手の「自由」を心から認めあっていないからだという。親子の関係は「してあげている」「されてあげている」という構図になりがちだ。そこに軋轢が生じると、お互いにイライラし、反発しあう。「どうしてわかってくれないの?」という親と「どうして認めてくれないの?」という子どもとの関係は平行線になりがちだし、相手の存在が自分を成り立たせているという「共依存」の関係でもあったりする。

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 意外なことに、そういった過干渉な親も、「私は子どもに好きなようにさせている」と自負していることがあるという。だがその実は、自分の理想を子どもに押し付けているケースも少なくない。子どもに自分のかわりに夢を叶えさせようとして、プレッシャーを与えてしまうのだ。

 子どものほうはというと、自分が親を悲しませることに「罪悪感」を抱きがちだ。自分が親の期待通りにできずに親をがっかりさせてしまったら、突き放されてしまうのではと寂しくなり、罪の意識を生む。けれど、全て期待通りにいくことは当然ながら難しいため、その「寂しさ」が親に対する「怒り」となって現れることもあるのだ。

 理想的な親子関係は、親が「子どもが失敗をする自由」を認め、子が「親が可哀想な目にあう自由」を認めることだという。それはお互いが「自分とは違う人間」であることを理解し、それぞれが自分の気持ちを優先していいということである。親は、代々受け継がれてきた依存型の子育てのパターンに気づき、子どもは。自分の歩む道が結果的に親の期待を裏切ることになってもよいと理解することが大切だ。

■ギクシャクしがちな母娘の会話、どう変えればいい?

 本書には、こんな母娘の会話例が載っている。母親が「買い物に行きたいからお店まで車で送ってよ」と娘に頼む。娘は家でゆっくりしたかったのだが、しぶしぶ応じた。母は娘の不機嫌そうな顔に少し傷つき、その苦しさや居心地の悪さを解消するために、娘の運転の仕方を叱る。娘も感情的に言い返し、ピリピリした空気に…。なんだかどこの家庭でもありそうなこんな場合は、どう対処するのが適切なのだろうか?

 著者が勧めるのは、自分の気持ちや欲求を基準に、素直に言葉に出すことである。店に着いたとき、たとえ母親に迷惑がかかっても構わないと考えて娘が「悪いけど、私はこのまま先に帰るね」と言ってサッと帰るのもOKだ。そのことで自分の心を大事にでき、母親が反省するチャンスも与えることができる。あるいは母親が「私があなたに『送って』って言ったとき、あなたの気持ちを無視してごめんなさい」と謝罪を伝えることもできるし、娘が最初の時点で「ごめんね、私仕事で疲れていて今日はゆっくりしていたいんだ。明日の午後ならいいわよ」と伝えることもできる。

 本書では、こういった「苦しい親子関係」から抜け出すためのヒントがわかりやすく解説されている。ポイントは、良い意味で「自分中心」になること。親子のように近い関係でも、本来はお互い自立した別の人間である。親子が相手の「自由」を認め合うことで、より信頼の置ける親密な関係を作り上げることができるのだ。

文=ジョセート