プロモーションビデオ公開で話題騒然! センパイをテレさせる新感覚の将棋ラブコメ!!
公開日:2019/8/21
2019年7月より放送中のTVアニメ『からかい上手の高木さん2』。原作は『ゲッサン』に連載中の漫画で、作者は山本崇一朗氏だ。実はこの山本氏、なかなかの多作であり、他にも連載作品を同時進行している。そのひとつが『週刊少年マガジン』で連載中の『それでも歩は寄せてくる』(山本崇一朗/講談社)だ。
この作品は「将棋部」を舞台に繰り広げられる日常を描いたラブコメである。将棋部の部長・八乙女うるし(高校二年生女子)が、部員の田中歩(高校一年生男子)に翻弄される姿を、コミカルに描いている。女子が男子をからかうスタイルの『高木さん』とは逆パターンだ。
本作のポイントは、田中歩が八乙女うるしを「好き」だということだ。物語冒頭でも語られるが、将棋部にはこのふたりしか部員がおらず、しかも歩はもともと剣道少年で将棋などまったく知らなかったにも拘わらず、将棋部に入部したのである。しかし「お前、私のこと好きだよな」とうるしから詰め寄られても、歩は「何を言っているんですか」と態度をハッキリさせない。なぜかといえば、彼は「告白するのはセンパイに将棋で勝った時」と心に誓っているからだ。
とはいえ、基本的に無表情だが性格は素直な歩は、うるしに対しての気持ちを素直に表現してくる。「センパイの笑顔はとても素敵ですから」とか「どうしてもセンパイと相合い傘したいですね」など、ド直球なセリフをうるしに投げかけてくるのだ。言葉遣いはぶっきらぼうだが、とてもかわいいセンパイのうるしは、そのたびに「んあっ!?」という吃驚と共にテレまくることに。そう、本作は歩の褒め言葉にうるしが全力でテレてしまう姿を描いたラブコメなのである。
だが、そんな歩にも悩みがあった。それはセンパイの「願い」である。実は彼らの将棋部は、正式な部ではなかった。そもそも最初はうるしだけしかおらず、彼女が勝手に「部」を名乗っているだけだったのだ。そんな彼女の願いは将棋部を正式な「部」にすること。そのためには、あとふたりほど部員が必要なのである。しかし、歩にとってそれは「悪夢」であった。なぜなら、大好きなセンパイと「ふたりきり」でいられなくなるから。だから普段は無表情の彼も、うるしが新しい部員を連れてくると分かりやすく絶望し、すぐに辞めていくとあからさまに嬉しそうな顔をするのである。とはいえ、好きな人の願いを叶えてあげたいと思うのも、至極当然な反応だろう。正式な部にはしてあげたいが、部員が増えるのは困る──そんな歩の葛藤も物語の見所だ。
そういえば先日、本作のプロモーションビデオが公開され、話題となっていた。まあ原作のストックも溜まっていない今、アニメ化の話は早計なのだろうが、うるしと歩に声が付いただけでも盛り上がるには十分である。一応、本書にはふたりの対局の「棋譜」が載っており、将棋漫画っぽい部分もあるけれど、基本的には将棋をまったく知らなくても楽しめるはず。歩はセンパイに将棋で勝って告白できるのか、部員は本当に増えるのかなど気になるところは多いが、とりあえずうるしのテレまくった姿に心惹かれたのならば、読者はこの作品に詰まされたといっていいのかもしれない。
文=木谷誠