コツは「そうなんです」と言わせるだけ! その道のプロが教える最強のクレーム対処法

ビジネス

公開日:2019/8/23

『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』(山下由美/ダイヤモンド社)

 こちらに非がないのに激怒され、ひたすら謝罪を要求される。謝り方を間違えば、怒りはさらに倍増する。要求に応えたつもりなのに、相手の怒りが収まらないこともある。

 そんなクレーム対応の仕事は、厄介で面倒なもの……という印象を多くの人が持っているだろう。『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』(山下由美/ダイヤモンド社)で著者が示すクレーム対応メソッドのキモは、シンプルかつ明快なものだった。

 それは「怒っているお客さまに『そうなんです』(YES)と言わせる」ことだ。なぜ「そうなんです」と言わせることが有効なのか。著者の説明は以下のようなものだ。

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 クレームをつけてくる人は、予想外の出来事や度重なるストレスに当惑して、「こっちは困っているんだ!」という感情をぶつけてくる。クレームを受ける側は、最初に「言い訳」や「正しい説明」をしがちだが、それでは相手の怒りは高まるだけだ。最初に必要なのは、クレームをつけてきた人の怒りを認め、その立場を理解するような言葉だ。

 たとえば「ビールが冷えてない!」とクレームをつけてきたお客さんには、謝りつつも「こんな暑い日に、ぬるいビールはお口に合いませんよね」の一言を添える。そんな返事をされたら、相手は「そうだよ! だから怒っているんだろ!」とさらに怒鳴るだろう。

 だが、相手の言葉に「そうだよ」と同意した人は、自分の怒りや窮状を「わかってもらえた」という感情を持つ。そして、相手の話を受け入れやすくなっているので、続いて提示されるトラブルの原因説明や解決策も受け入れてくれやすい……というわけ。なるほど、納得のいくロジックだ。

 本書のこうしたクレーム対処法を読んで気付かされたのは、このメソッドは夫婦喧嘩や感情を爆発させた子供への対応でも有効そう……ということだ。

 家族から自分に表明された怒りというのは、クレームと同じく「私を助けて!」というSOS。その怒りの裏には不安、不満、悲しみなど、様々な感情が渦巻いている。やはり必要となるのは、なぜ相手が怒りをぶつけてきたのかを理解し、その感情に寄り添い、「○○で大変だったんだね、辛かったんだね」という言葉を添えつつ謝ることだ。そうすれば相手は心を開いてくれるし、一緒に悩みや問題を解決していくこともできる……。夫婦関係や子育てがテーマの本にはよく書かれている話だが、クレーム対処法がテーマの本書でも、話の骨子は同じ内容だった。

 本書で著者は「お客さまは機械ではなく、一人ひとり感情を持った人間です。100人いれば100通りの対応が必要になり、その時のお客さまの感情がいつもと違えば、さらに何万通りの対応が必要になります」と書いている。

 家族の怒りに接するように、一人ひとりのクレームと真剣と向き合い、その裏にある不安や悲しみまで探り当て、問題を解決しながらその感情を解きほぐしていく仕事。そう考えるとクレーム対応という人から嫌われがちな業務も、非常にやりがいのある仕事に見えてくるのだった。

文=古澤誠一郎