「金融機関の商品にも合法的な詐欺と言えるグレーなものがある」森永卓郎親子が、“お金の知恵”を伝授!
公開日:2019/8/28
消費税増税に年金の不足…そろそろ自分も「お金」のことを真剣に考えていかないとマズイかも…誰もが内心、そんな漠然とした焦りを感じているんじゃないだろうか。昔から日本人は「お金の話をするのは卑しい」と言われてきたせいか、お金の話が苦手という人が多い。だがしかし、これからの時代をサバイブするにはお金の話は避けて通れない。困った!!
こんな時には、わかりやすく教えてくれる本に知恵を授かるのもいいだろう。このほど登場した経済アナリストの森永卓郎氏とその長男・康平氏による『親子ゼニ問答』(KADOKAWA)は、お金の話の基本を「生きるためのリアルな知恵」として伝授してくれる一冊だ。
森永卓郎氏といえば、ベストセラーとなった『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)で、「年収300万円時代」の到来をいち早く予測した人物。今から16年前の2003年時点では「いつか来るかもしれない不安」だったが、今や現実になっている。そんなシビアな分析眼を持つ卓郎氏によれば、「年金2000万円不足予測は甘い」というのだから、全くどんよりする。だからこそ「どうしたらいいか」を考えるのが本書だ。
共著のパートナーは同じく経済アナリストである息子の森永康平氏。証券会社や運用会社のアナリスト、ストラテジストとして国内外で活躍してきた経歴を持ち、父の分析眼に今どきの金融事情に精通したリアル目線がさらに加わるのが心強い。
本書では現在の厳しい社会をお金の面から総括し資産形成の重要性を再認識した後、まずは貯蓄をはじめとする銀行の仕組みをおさらいし、次に資産運用について考える。とにかく基本的な仕組みと考え方を解説していくが、いわゆる「狙い目の金融商品」の紹介ではなく、そもそもそうしたものを「どう捉えていけばよいか」という基本姿勢を教えてくれる。しかもいたってロジカルなのに、数字が苦手な人にもわかりやすいのがうれしい。
実はこういう視点がしっかりないと、もっともらしい「儲かります」の甘い囁きにうっかり乗ってしまうことがあるかもしれない。実際、著者たちは「月利3%を保証するなんて商品は異常」「金融機関の商品にも合法的な詐欺と言えるグレーなものがある」とダメ出しし、騙されやすい人の特徴を指摘するが、こういう知識も確実にアラームになる。知っているのと知らないのとでは大違いの、まさに「生きるための知恵」だ。
ならばそんな知恵を、これからの時代を生きる子どもたちに教えなくていいのか? 本書のもうひとつのテーマは、子どもたちにいかにお金の話を教えるかについて考えることだ。実は康平氏は金融教育をライフワークとしており、「自衛をしていかなければならない時代には、親子でお金の話をするのが大事」と訴える。何にいくらかかるのか家計の状況をある程度共有して経済感覚をつけさせる、日常の生活でわかる「経済」をできるだけ教えるなど、本書で紹介されている実践的なアイディアも参考になるだろう。
なるべくリスクを取らずに着実な方向を志向する父・卓郎氏と、リスクも考え方次第と考える息子・康平氏。そんな2人がプチバトルするのも本書のお楽しみだが、どちらの考え方にも納得がいくという点は注視したい。つまりそれだけ考え方には幅があるということであり、そうした現実も踏まえて自分なりに考え、本当の「生きるための知恵」にしていくのがいいだろう。
文=荒井理恵