相手の顔のどこを見れば好印象を与えられる? /Mr.マリックの『超魔術の裏技術』④
公開日:2019/9/12
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対話 告白 接客 に使える超魔術【1対1のコミュニケーション】
■グローバル時代だからこそ日本人の国民性を理解する
販売員時代、私はマジックグッズの買い付けで海外へ行くことが多々ありました。また、ストレスで顔面麻痺に襲われて2年ほど休業した際は、ロサンゼルスでマジックを披露していたこともありました。英語は全然上達しませんでしたが、外国人と接する機会は多かったのです。
そんな経験の中で感じたのは、日本人と外国人は全く別の生き物だといっていいほど価値観が違うということです。
ですからマジックショーの内容も、コミュニケーションの取り方も、日本人向けと外国人向けを完全に分けています。
ここでひとつ、箸、ナイフ、フォークのお話をしましょう。
日本人は箸を自分と平行に置きますね。しかし外国では、箸もナイフもフォークも、自分に対して直角に置く。つまり、先端が全部相手に向かっているのです。これはいざという時に、相手を刺すためです。
農耕民族の日本人と違い、常に戦いを続けてきた大陸の人々のDNAには、攻撃の遺伝子が組み込まれているのです。
日本人が箸を自分に平行に置く理由は攻撃の意志がないことと、もうひとつ理由があります。神の恵みである農作物(ごはん、おかず)と、それを食す人間との結界を表しているのです。「いただきます」と言い、箸をとって結界の向こうへ行く。そういう意味合いもあります。
落語家が目の前に置く扇子と同じですね。あれは、自分がいる舞台とお客様のいる観客席との結界を示しています。
ちなみに外国の食文化であるフォークは爪、ナイフは牙を意味します。爪と牙を使って肉を食す。じっと人の目を見つめるのも、いかにも好戦的な肉食獣を彷彿とさせます。外国は獣の文化なんです。
対して日本は鳥の文化です。中国から伝わり、日本の食文化に根付いた箸は鳥のくちばしです。鳥は魚を捕らえ、くちばしを器用に使って骨をとりますね。
また、鳥は綺麗好きで水浴びをします。日本人が風呂や温泉を愛し、潔癖なくらいに綺麗好きなのも鳥の文化を裏付けています。お辞儀も鳥の首の動きです。
箸、ナイフ、フォークという話だけでも、日本人と外国人はこんなにも違います。
挨拶にしても全然違います。日本は礼に始まり礼に終わる国ですよね。信用を築いた人間のことはとことん応援しますが、新参者には手厳しい。閉鎖的な国民性だといえます。
海外、特にアメリカは「イエー、ハロー!」とフレンドリーですね。さんざんお喋りして別れた後に「あいつ誰だっけ?」という。日本とは正反対です。どちらがいい悪いという話ではありません。全く違うということです。
ショーをやっていてもその違いは如実に感じます。外国人の第一声は「ワンダフル(すごい)!」です。日本人の第一声は「どうなってるの?」です。
外国人は目の前の出来事に素直に驚くのです。タネを推理しようとしない。日本人はまず「怪しい」と疑い、「何がどうなっているのか」を推理しようとするのです。私はいろんな国に行き、いろんな人種とコミュケーションを取ってきましたが、こんなに疑い深く、考え込むのは日本人くらいです。
マジシャンは客を悩ませよう、考えさせようとしているわけじゃありません。楽しませようとしているんですけどね。
テクニカルなマジックを得意とする島田晴夫さんは、日本よりも海外でのほうが評価が高い。これは国民性によるものです。逆に私が海外ではなく、国内でブレイクしたのは、疑い深い日本人の国民性を逆手に取ったショーをつくったからです。
令和の時代は東京オリンピックもありますし、ますます労働力不足になりますから、日本へやってくる外国人がもっともっと増えていくはずです。ですからみなさんも、コミュニケーションの取り方を使い分ける必要があると思います。
疑い深く、物を斜めの角度から見ようとする日本人。その国民性を理解した上でコミュニケーションの方法を組み立てていくべきでしょう。
■相手の顔のどこを見れば好印象を与えられるのか
大陸の人々は古来より戦闘の歴史を歩んできました。目を逸らしたら負け。目を逸らした瞬間、何をされるかわからない。そういう歴史がDNAにあるんですね。だから目を逸らさない。相手の両目をじっと見るのは〝射す目〟です。戦闘態勢の目。猫もそうですね。じっと見つめると飛び掛かってくる子がいます。
島国の農耕民族である日本人は違います。じっと両目を見ることは「喧嘩売ってるのか?」となってしまいます。ご法度です。かといって、相手を見ないのもまた失礼な話。「こっちを見ようともしない」と相手は怒ってしまいます。
だったらどうすれば失礼に当たらないか? どこをどう見れば相手に好印象を与えられるか?
口元を見ていると、相手からすれば目よりも下への視線になりますから、「この人、目も合わせようとしない。自信がないのかな」と思われてしまう。
逆に相手の目の上、額のあたりを見ると、相手に「こいつは生意気だ」と思わせてしまいます。
眉毛よりも上を見ると、見下したような目線になってしまいます。相手に不遜、傲慢、攻撃的、挑発的といったイメージを与えます。いいことはひとつもありません。
両目と口を結んだ三角形を見よ。こんな風に教える本やマナー講座もあります。私はこれもどうかなと思います。実際に誰かにやってみてもらってください。焦点が合っていないように感じるはずです。
私は相手と話すとき、片目を見ます。片目だけを見るようにすると、見られているほうは射すような強い視線を感じなくて済みます。どうぞ、仲の良い人とお互いにやりあってみてください。実感できるはずです。じっと片目を見つめ続けるのではなく、たまに目と口の間あたりに視線をゆっくり泳がせます。
これがちょうどいいバランスだと思います。慣れるまで少し時間はかかりますが、ぜひそうしてみてください。
目と目がぶつかるから火花が出るのです。相手が強い目線を送ってきたら、受けましょう。逃げてはいけないし、やり返してもいけない。静かに受け止めるのです。それは片目がちょうどいい。
相手が見ていなかったら、こちらは両目を見てもいいでしょう。そして相手が見返して来たら、片目だけに移行するのです。
大切なことは目と目でぶつかりあって火花を散らさないようにすること。かといって逃げないこと、です。片目はいかなる状況にも有効なのです。
【次回に続く!】