転職×副業で生涯年収を押し上げる! 次世代サラリーマンの生き方
公開日:2019/9/17
「大企業に就職すれば将来は安泰」だと言われていたのは、いつのことだっただろう。高度経済成長の終焉とバブル崩壊から20年以上が経過し、日本人の労働環境は大きく変化した。日本を代表する大手自動車会社さえ、終身雇用の維持は不可能だと認め、以前は当たり前だった働き方はもう望めない。環境は変わっているにもかかわらず、人々の考え方は昔のままだ。新卒は安定を求め、大企業や有名企業への就職を夢に見ている。しかし、それは本当に「安定」していると言えるのか。
『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』(moto/扶桑社)の著者は、年収240万円のホームセンターに就職したのち、転職と副業によって年収5000万円を達成したという。転職や副業によって年収を伸ばしていくことがこれからの労働者にとって必須のスキルなのだ。
大企業に勤めることが安定した人生に欠かせないと言われていたのは、「大企業は倒産しない」「いつまでも成長する」と思われていたからだ。ところが現代においては、そうした考えは通用しない。どれだけ規模の大きな企業であっても、何らかのきっかけで倒産したり経営難に陥ったりする。そうなれば勤めていた労働者が仕事を失う可能性は、決して低くないだろう。
だから問われるのは「個人で稼ぐ能力」だ。たとえ勤め先が変わったとしても「市場価値が高い人材」「生産性の高い労働者」であれば、きちんと稼ぐことができる。1つの企業に依存するのではなく、「どこに行っても求められる人」として稼ぐことが本当の意味で安定した生活を送ることにつながるのだ。個人で稼ぐとは言っても、それは必ずしもフリーランスになることではない。仮にフリーランスで働いていても、特定の取引先に振り回されているようなら「企業に依存している状態」と言えるだろう。
重要なのは、そうした雇用形態ではなく、「スタンス」の問題だ。働き方に関わらず、「自分が社会に必要とされている」のが個人で稼げる状態だ。それは単純に資格や技術の有無だけでは測れない。たとえ人に誇れる資格など持っていなくても、「世の中から求められる人」になることはできる。実際、著者は短大卒であり一般的な大卒よりも不利な状況から仕事を始めた。それでも年収5000万円を実現しているのだ。
お金を稼ぐことを「個人的な利益を優先するもの」だと考えるのは間違いである。誰かが報酬を与えてくれるのは、その人が「会社に貢献する人材」であり、ひいては「社会に求められる人材」だからだ。つまりお金を稼ぐには、「自分が他者に対して何を与えられるのか」を考えることでもある。自分がもらうことばかり考えていては、市場価値など上がらないし、年収を上げることもできない。企業にとって利益になるからこそ、「高く買ってもらえる」という点を忘れるべきではないだろう。
本書では、「目的を持って働くこと」の重要さが強調されている。それは家を買うことでも、蓄財することでもかまわない。そして、その目的を達成するために必要となる具体的な行動を実践していく。安定した生活も高い年収も、実現するのは「本人」でしかないのだ。著者がどのような転職によって年収を上げたのか、具体的な思考法や経験談が本書には詰まっている。それは決して楽な方法ではない。
しかし、本当に望む未来があるのなら、できることを実践していく決意は欠かせないだろう。新しい働き方を考え、自らの手で人生を組み立てていこうと考えている若者たちにとって、この本は大きな指針を与えてくれるものだ。転職するかどうかに関わらず、「働くとはどういうことなのか」という問題と真剣に向き合う力をくれる一冊でもある。今の仕事、そしてこれからの働き方に悩んでいる人は一度読んでみるべきだろう。
文=方山敏彦